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62.仲直りの朝 ページ16





なんだか目が冴えてしまって、もう眠れそうにない。
チラリ、とまだ夢の中のシリウスを見る。
静かな寝息を立て、気持ち良さそうに眠っている彼を見て、私も小さく息を吐きだした。

起こさなかったことに安心する。
そっと近づき、風邪を引くといけないので布団を掛け直せば、彼は身じろいだ。
それがなんだか可愛くて、その黒髪を優しく撫でる。



「……シリウス」



静かな寝室に響く己の声。
愛してる。と続けようとした。が。

目が、開いている。



「シリウス!?」


焦りながらもう一度呼べば、反対の手を引っ張られて、あっという間にベッドの中に逆戻り。
ボスンっと柔らかなマットレスに沈み、ぎしっ!と派手な音が鳴った。



「マリア」



穏やかで、優しい彼の声。
両頬を両手で包み込まれる。
頬を撫でた後に、その手は腰にまわって抱き寄せられた。


「おはよう」

「お、おはよう…シリウス…」


先程私が撫でたように、優しく頭を撫でられる。
彼の体温で温まったベッドと、私を包み込むシリウスの匂い。
無意識に強張っていた体の力がどんどん抜けていく気がした。


「随分と早起きだな…」


「貴方こそ」


吐息が触れるほど近い距離で言葉を交わす。
私と手を伸ばして、シリウスの頰に触れた。


「朝から手紙か?」

「そう。…ダンブルドアに頼まれてね」


誤魔化すように頬を撫でた。
シリウスは訝しげに眉を寄せたが、「そうか」と小さく返事をしただけだった。



「…昨日の朝、キツい言い方して悪かった」


「私こそごめんなさい…」


不意に、気まずそうな声でそう謝られる。
あぁ、この声はずっと言いたかったのかななんて思いながらも、口付けを交わす。

そういえば私はずっと、婚約指輪を外したままだ。
ふと思い出し、チラリと何も付いていない指に視線をやる。
随分と前からそこを飾っていた指輪は、今頃リビングのテーブルの上だろうか。


「マリア?」


名を呼ばれて、はっと意識を引き戻す。
シリウスは不思議そうな顔をしていたが、「何でもないよ」と微笑んでみせた。

まだ何も身に纏っていない彼の首筋に擦り寄った。
足を絡ませる。
何も見たくないと瞳を閉じた。

優しく頭を撫でられる。
それだけでも胸がいっぱいになって、何故か涙が頬を伝った。



「マリア」


優しく名を呼ばれる。
耳の奥で彼女の声が聞こえた気がする。

彼の胸に抱き込まれながら、私達は暫く互いの体温を共有し合った。

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こっこ(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!とても面白くて1作品目から一気に読ませていただきました!もう更新のご予定はないのでしょうか?お待ちしております (2021年12月5日 22時) (レス) @page22 id: 87bbda5ac3 (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます。修正致しました。 (2021年5月28日 13時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 11ページにも同じように リア という名前が出てきています (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 9ページ リア というのは夢主のことでしょうか? (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - ぴっぴさん» ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです…!とても励みになります! (2020年12月16日 21時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ihok | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/ihok__  
作成日時:2020年11月13日 14時

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