５７.深淵 ページ11
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「未来を、視る……？」
「そうじゃ」とダンブルドアは頷く。
指の先から温度を失っていく感覚が、全身を駆け巡った。
急に両肩にのし掛かった大きな責任。
は…、と息を吐き出す。
「シリウスとは、まだ籍を入れておらんのかね？」
「……はい」
口に出されたその名にハッとする。
あぁ、そうだ。と。
「そうか…。
君たちに1番に子どもができると思っていたのだが…」
「……シリウスは、それを望んでいますが」
「？、君が拒んでおるということかね」
その言葉に沈黙を返す。
だが、決して拒んでいるわけではない。
まだ覚悟が決まってないだけで。
「私に、未来を視る力が、本当にあるとするなら…、先生は、何を視せたいのです…？」
「視せたいものなどない。ただ…、視てほしいだけじゃ…」
ぎゅっと手を握りしめる。
いつの間にか歯を強く食いしばっていたようで、意識的にその力を抜いた。
「……わかりました」
小さくそう吐き出す。
ほとんど小さな声でも、ダンブルドアには届いたらしい。
「ありがとう、マリア」
肩にぽん、と手を置かれる。
「それではまた、連絡する」とそのまま私の横を通り過ぎて、扉から出て行った。
誰もいなくなった部屋に、1人取り残される。
静かすぎる部屋。物音1つさえ聞こえない。
急に全身が重たくなった気がして、膝の力が抜けた。
床に膝がつく。ぶつかるような音が響く。
ため息さえ出ない。
急に任された重責と、体の中に充満する虚無感。
例のあの人を倒すために、ダンブルドアの言う通りにするのが1番だと知っている。
それが魔法界の悲願であり、未来のためだと。
だが、私は充分やっているはずだ。
私の全てを犠牲にしてまで、やらねばならないのか。
それに、私にはシリウスがいるのだ。
私がこれに関与するなら、シリウスも巻き込むことになる。
それは、正しいことなのだろうか。
どれだけ続くかわからない暗闇に、自ら身を投げ出すようなものだ。
だって、未来とは人智を超えた力であり、1度視えてしまえば、何度も頼られるに決まっている。
微かな幸せを望むこともできないのか。
彼を、父親にしてやれることも叶わないのだろうか。
何かしら方法があるのかもしれない。
だけど、こんな深淵に、彼を巻き込んでいいのだろうか。
頬が絶望に濡れた。
生暖かいそれは、輪郭を伝って、床にこぼれ落ちる。
気づけば声を上げて泣いていた。
わからなくて、何も、わからなくて。
正解とは、なんなのだろうか。
「シリウス…っ……シリウス……！」
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こっこ(プロフ) - 初めまして！コメント失礼します！とても面白くて1作品目から一気に読ませていただきました！もう更新のご予定はないのでしょうか？お待ちしております (2021年12月5日 22時) (
レス) @page22 id: 87bbda5ac3 (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます。修正致しました。 (2021年5月28日 13時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 11ページにも同じように リア という名前が出てきています (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 9ページ リア というのは夢主のことでしょうか？ (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - ぴっぴさん» ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいです…！とても励みになります！ (2020年12月16日 21時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ihok | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/ihok__
作成日時：2020年11月13日 14時
