憧れ ページ11
＊
オレは最初、隣の席の人が美人で喜んでた。
でも、黒川さんのことを男子から聞いてから
黒川さんは恐怖の存在となった。
隣の席といっても、話すことは全くない。
だって、隣の席っていうだけで特にたいした接点はないし…
そしてオレはいつも通り授業中にも関わらず、ぼーっとしていた。
意味のわからない単語や数式は耳から耳へと流れていく。
そんなオレに前の方から怒号。
「沢田！！
何ぼーっとしてる！！話を聞いてるのか！？
この問題を解け！」
げっ！今の時間数学だった！！
この先生、話を聞いてなかったらペナルティ出すんだよなー…
全然話聞いてなかったし、数学とか全然わからないため、黒板に書かれた問題など解けるはずもない。
素直にわかりません、と言おう。
「なんだ？解けたか？」
「えぇっと…スイマセン、わかり…」
そのとき、隣からツンツンとシャーペンでつつかれた。
何かと思いそっちを見ると、黒川さん。
黒川さんはノートに書かれた答えのところに丸をした。
これがあの問題の答え…？
「どーした！沢田！はやく答えろ！」
「は、はいっ！
答えはx=3、y=1、です…？」
ふむ、と答えを見る先生。
「正解！ちゃんと話を聞いていたようだな！」
「は、はい…」
ほっとして席に座る。
先生は授業を開始した。
オレは黒川さんに小声で
「ありがとう。助かったよ。」
と言った。
黒川さんは返事はしなかったけど、
目線だけこっちに向けて微笑んでくれた。
オレは思わず見とれてしまった。
微笑んだ黒川さんがあんまりにも綺麗だったから。
京子ちゃんとは違う笑顔。
滅多に見せないその優しい笑みは
オレの頭の中からこびりついてはなれなかった。
それから、黒川さんのことを知りたくて
黒川さんを観察してた。
わかったことは、
運動能力が高くて、頭も良くて、すごく優しくて、皆に認められてて…
ダメツナと呼ばれてるオレとは何もかも正反対だった。
でも、正反対だから憧れたんだ。
黒川さんに。
いつか黒川さんみたいになれたら、
京子ちゃんとも釣り合えるくらいの人間になれるかな。
なんて、思ったり。
でも、それから黒川さんとは何もなかった。
仲良くなりたかったけど、こんなオレじゃ相手にしてくれないだろうし、
席替えをして離れてしまったから。
だから、こうして今日、
黒川さんがジャージをオレに貸してくれたのがとても嬉しかった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 798人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「成り代わり」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まぶぴちょこ(プロフ) - 続きがとっても気になります！是非とも続きを書いてほしいです…いつまでも更新楽しみにしています (2022年4月15日 19時) (
レス) @page33 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
アル - あれま？終わっちった？？面白い！って思いながら読んでたらいつの間にか終わってました…是非とも続きを… (2020年8月16日 1時) (レス) id: 327b6bf4ac (このIDを非表示/違反報告)
リア - あーこういうのマジで好きです。 完結しちゃってますけどもう続きは書かれないのでしょうか…それだったらとっても残念です (2019年2月19日 15時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
部久(プロフ) - 展開珍しくて面白いです。更新楽しみにしてます。頑張ってください (2017年9月4日 17時) (レス) id: 0d4f3869ed (このIDを非表示/違反報告)
アリーナ - 面白いです(o>ω<o)応援します(*´∀`*)ﾉ｡+゜*｡ (2017年5月11日 14時) (レス) id: 4a32832ed1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
