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「こっ、こここコイって、私が、そんな…何言ってんですかおついちさん!」
「だって、兄者とおてて繋いだりしたいでしょ?」
「ち、ちが、私はそんな、」
「何ならチューとかもしてみたいよね?」
「…!……!!」
あ、ちょっと意地悪過ぎた?
浜辺に打ち上げられた魚のごとく、パクパクと口を開く高橋ちゃんは、顔を真っ赤にして「恋じゃない!」と首を横に振る。
「私、わたし、あんな意地悪で嫌味な人ぜんぜん好みじゃないですし!私が好きなのは、おついちさんみたいな優しい人で__」
「でっけえ声で人の悪口かよオイ」
「あ、兄者」
普段よりも低いその声に振り返れば、見るからにイライラした様子でポケットに手を突っ込んでいる兄者。
てっきり女の子たちと来るかと思ったのに。
無理やり俺と高橋ちゃんの間に入り込んだ彼は、「で?」と睨むように俺を見つめた。
「…で?とは?」
「おっつん、コイツと付き合うワケ?やめといた方がいいと思うけど」
「なんで?」
「……なんで、って、…」
ウワサの張本人を目の前に耳まで真っ赤に染める高橋ちゃんを一瞥し、再び俺に視線を戻す兄者は、眼鏡の奥で静かに嫉妬の炎を燃やしている。
兄者くん、オメーもか。
珍しく言いよどむ兄者の言葉を遮るように、俺はゆっくりと口を開いた。
「高橋ちゃんがね、兄者が他の女の子と仲良くしてるの見て、ヤキモチ焼いてるんだって」
「…は?」
ぽかんとした顔の兄者の後ろで、「おついちさん!」と悲鳴じみた声が飛ぶ。多少困惑した様子の兄者に、追い打ちを掛けるようにその背中を押せば、二人は静かに向かい合って頬を染めた。熱っぽく潤んだ瞳に見上げられ、兄者は顔を背けて眼鏡のブリッジを押し上げる。
…もうお節介は必要ないだろう。
そう判断した俺は、二人の世界を邪魔しないように、そうっと彼らから離れて会社のロビーを進んでいく。
さて、二人が結ばれるのもあと数分。とすれば、俺の悩みの大部分もこれで解消されるはずだ。
みんなハッピー、めでたしめでたし!最高のエンディングではなかろうか!
顔を真っ赤にして無言をつらぬく二人の後輩を振り返り、俺はニッコリと頬を緩めた。
だから、後はどうぞご自由に。
勝手にやってろ
(おっつん大変!)
(あら弟者くん、どしたの?)
(兄貴と高橋先輩がロビーでめっちゃバトってる!)
(……俺転職しようかなあ)
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はやさか(プロフ) - へーすけさん» 初めまして!そして、返信が一年ぶりという非礼を詫びさせてください…orz 素敵なんて言っていただいたの初めてでとっても嬉しいです〜!ありがとうございます! (2020年12月18日 21時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
へーすけ - 初めまして、へーすけと申します。はやさかさんの素敵な夢小説を読ませていただきました。誠に勝手ながらこっそりと応援しています。 (2019年7月22日 21時) (レス) id: 53845ff19b (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃさん» 返信遅くてすみません!!私も語彙力と文章力の無さに日々悩まされております……ありがとうございます、またみぃさんの作品も拝見させていただきますね! (2019年6月24日 16時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - はやさかさん» 返信ありがとうございます!!私も色々書いておりますが語彙力が無さすぎて汗これからも頑張ってください!! (2019年1月6日 0時) (レス) id: f861e836fe (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃまさん» 遅くなってしまい御免なさい!有難うございます、この一年ろくに書けなかったので今年は沢山書きたいです! (2018年12月29日 10時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はやさか | 作成日時:2018年3月29日 22時