花、そして散る*5

17*Hayato ページ17

カメラ片手に仕事をこなす、彼女を見る。




ジャージ姿で頑張るAは、どこか不安げな顔をしていた。









目の前には、頼りになる先輩が２人。

Aのことだと言えば、“任せろ”とでも言うような顔をしている。俺が悩んでることがお見通しなんかな？






これは、全部話すしかないな。









『Aのことなんですけど……』

内海「それはさっき聞いたから、早く本題！」

『最近俺、フォーム崩れたりして不振やないですか……』

内海「確かに、ゴロとフライばっかやな」






確かに、もうすぐ開幕だというのに、平凡なゴロとフライばっかりやで。不振や不振。

でも、内海さんに今言われるなんてな。

悔しいやんか。
燃えてくるやんか。









阿部「今言わなくていいから。で？」

『Aが何か、気にしてるんかなーって』

阿部「“自分のせいでお前が不振になった”とか？ Aちゃんが思ってるって？」

『最近、不安げな顔しとるし。そうなんかなって思って』









あれ？ ちょい待って。






俺、今深刻な話しとるよな？

今って、大事な相談中やんな？






せやのに、なんか笑ってる人が居るんやけど。
口を押さえながら１人だけ。







“内海哲也、なんとか結婚できました”

自分、結婚できてるからって、いっつものろけ話ばっかの内海さん。








『内海さん。なんで笑ってんすか？』

内海「いやっ。勇人もちゃんとした恋愛するようになったんやなって思って」

阿部「確かに。勇人も、女持ちの野球選手が通る道にやっと来たよな」





えっ？ なにそれ？

女持ちの野球選手が通る道？




メディアとの付き合いかたまで、教えてもらった入団の時、そんなことは教えてもらわへんかったけど。


内海さんと阿部さんは通ったん？









『全然意味分かんないんっすけど』

内海「だからAちゃんがお前の不振を自分のせいやと思うのは、普通なの。当たり前」

阿部「まぁ、時期も時期だしな」

内海「俺だって、嫁と喧嘩した頃に勝てへんくなって、余計嫁と仲悪くなってん」

阿部「俺も、心配性な奴でさ。今は理解してくれるけど、最初は大変だったよ。“忙しいから連絡しないほうがいい”とか思われてて」

内海「わー、分かるわー。それあった」









今の俺とAもこんな感じなんかな？



Aは俺に遠慮しとるん？








どうなんか知りたいんや。

18*→←16*Hayato

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す