｜ ページ19
全くと言っていいほど使われてなさそうなシンクを見てAは自分が作ることになって正解だったと心底思った。
やっとの思いで布団をリビングに引きずり出してきた様子のキヨは大人しく布団に潜ると体力を消耗していた為か仰向けのまま動かなくなった。
『キヨさん、何なら食べれますか？』
「…んー…？……Aちゃんの作ってくれたものなら何でも嬉しいよ」
『からかわないでください』
顔色を真っ青に染めているにもかかわらず、キヨは余裕そうにニコニコとそんな事を言うのでAは呆れたように眉をひそめた。
結局吐き気と頭痛が酷いらしいのでお粥、というより重湯よりの病人食を作る事にした。
彼の症状はその態度とは裏腹にあまりにも酷いらしく、時折嘔吐き掛けたり、頭痛の酷さゆえか頭をかくかくと動かすような仕草をとっていた。
風邪には見られない症状にだんだんAも不安になりながら彼の口元に食事を運んでやったが、そんなAを他所に彼は微笑んでいた。
食事が終わり、食器をAが片付けているうちにキヨは食欲が満たされたからか気を失うように寝付いてしまった。
先程まで辛そうにしていたが、寝れるのなら安心だとAもその様子を気にしつつ洗い物を済ました。
片付けを全て終えると、またキヨの様子を見るためにAは隣へと座り込む。
規則正しい寝息を立てる彼は顔色もだいぶ良くなってきて、安眠といった様子だった。
しかし、冷えピタの貼られた額には汗が滲み出ていてふとAは掛け布団からはみ出た腕に目を付けた。
もう夏もすぐそこだというのに長袖を着ているとは余程の寒がりということだろうか。
だが、この家に入ってきた時からクーラーは付いており汗の量を見る限り彼本人も暑く感じているはずだった。
Aは少し袖をまくってやろうと袖のボタンを外して腕まくりをしようとした。
その瞬間に突如Aの携帯が鳴り、急いで画面を見るとそこにはAの先輩である林の名が表示されていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 387人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なみの。 - 壊れちゃった主人公ちゃんのふわふわした喋り方好きです・・・！とっても面白かったです。 (10月17日 23時) (
レス) @page48 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
霜はっぱ - 完結おめでとうございます!衝撃の最後!!びっくりしまった。流石です(^^)こういうのいっぱい欲しいです!でもあなたの作品はあなたが操るべきなのでご自身の思うがままに書いてくださいね!ほんとにお疲れ様でした!! (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
草の管理人 - 終わってしまったあああ!!!だがおめでとうございます!!言うのが遅れて申し訳無いです。想像の遥か上を行く最後で口が開いてしまいましたwほんとにお疲れ様でした!わがままですがこれからも病んでる作品いっぱい欲しいです…w (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - るなさん» え〜！？いつもありがとうございます！本当に書いているだけでこちらも体力を削がれるものだったので魂を削って書いた甲斐がありました。そのお言葉大切にします！私もこの作品とてもお気に入りなので愛してやって下さい！最後までありがとうございました！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 千景さん» 心に刺さるなんてそんな！もったいないお言葉ありがとうございます！重苦しすぎるヤンデレはこれからも書くと思うのでその時はまたよろしくお願いします！ありがとうございました！！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蠍
| 作成日時：2020年6月1日 0時
