｜ ページ20
感情が一つ消せるのなら、俺は迷わず【好き】という感情を選んでいた事だろう。
【好き】という感情を消せたのならこんなに君を愛すこともなかった。
ただの男と女で終わっていた関係がある日を境に俺を狂わせて、今は君を狂わせようとしている。
ただの友情で終わるのならどれだけ良かったか。
俺は君と誰かが愛し合うことをきっと心から喜べただろうし、
嫉妬なんて醜い感情は持ち合わせなかっただろうし、
君を妄想の中で無茶苦茶にすることも、
心を病むことも、
もしかしたら二度と出会うことも無かっただろうに。
全ての歯車が綺麗に噛み合っていたのに、君に出会ってから全部をバラバラに解体してしまったような気がする。
一から、まるで最初からそうであったかのように作り直すような。
でも、何か大切な部品を無くしてしまったような。
泥から這い出るようにキヨはうっすらと目を覚ました。
殴られたかのような酷い頭痛と渦巻くような不快感が残る胃にキヨは
毎回してしまってから苦痛にもがき苦しんで後悔をするのだが、生憎自分は何も学ばない様だった。
しまいにはAに看病をして貰っている有様に反吐が出る。
まあ、幸せと言えば幸せだが。
リビングを出た廊下で彼女の話し声が聞こえ、キヨはAが誰かと電話していることを察した。
その時だけは妙にキヨは勘が良く、電話の相手もなんとなく分かってしまい下唇から血が出るほどに噛み締めた。
ああ、邪魔だなあ。なんにもAちゃんの事分かってないくせに…
いっそ消してしまえばAちゃんもせいせいするだろうに。
そんな考えに蝕まれてキヨは大きくため息をついて両手で顔を覆う。
いけない癖なのは分かっているのだ。赤の他人、加えて自分より少し親しい彼女の周りの者が妬ましくて堪らず、すぐに変なマウントを取ろうとしてしまうこの癖。
それでもやめられないのはキヨ自身、心が病気にかかっているせいもあった。
単純に反省しそしてまた嫉妬をする、という悪循環なのだ。
暫く暗闇の中でAの話し声を聞くという空間で過ごすとゆっくりと顔を上げた。
もしもこのままAがさっさとこの家から出て行ってしまったらどうしよう。
それは俺より他を選んだということで、俺の事より大切な誰かが…
だんだんと被害妄想に移りゆく思考回路の中、キヨは自分の袖のボタンが外されている事に気づいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 387人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なみの。 - 壊れちゃった主人公ちゃんのふわふわした喋り方好きです・・・！とっても面白かったです。 (10月17日 23時) (
レス) @page48 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
霜はっぱ - 完結おめでとうございます!衝撃の最後!!びっくりしまった。流石です(^^)こういうのいっぱい欲しいです!でもあなたの作品はあなたが操るべきなのでご自身の思うがままに書いてくださいね!ほんとにお疲れ様でした!! (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
草の管理人 - 終わってしまったあああ!!!だがおめでとうございます!!言うのが遅れて申し訳無いです。想像の遥か上を行く最後で口が開いてしまいましたwほんとにお疲れ様でした!わがままですがこれからも病んでる作品いっぱい欲しいです…w (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - るなさん» え〜！？いつもありがとうございます！本当に書いているだけでこちらも体力を削がれるものだったので魂を削って書いた甲斐がありました。そのお言葉大切にします！私もこの作品とてもお気に入りなので愛してやって下さい！最後までありがとうございました！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 千景さん» 心に刺さるなんてそんな！もったいないお言葉ありがとうございます！重苦しすぎるヤンデレはこれからも書くと思うのでその時はまたよろしくお願いします！ありがとうございました！！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蠍
| 作成日時：2020年6月1日 0時
