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キヨは片足を立てながら座っていた体制から胡座へと長細い足を組み直した。
「高校の時、付き合ってただろ俺ら」
その言葉に箱を握り締めている手中はより密度を増す。
あんなに今の今まで積極的だったくせにキヨは行き場がないのかお腹の前辺りで両手の手先をちまちまと絡ませて恥ずかしそうに口火を切った。目線こそ合わないもののその言葉でAの心は幾分か救われた気分になって小さく首を縦に振った。
俯いたキヨが懐かしむように話したのは嫌な思い出としてAがとうの昔に葬ったキヨと別れたことと急な転校の話だった。
父親の思いがけない転勤で急な転校になってしまったこと、ろくにクラスのみんなにさよならも言えなかったこと、
別れを言い渡したのはその状況でどうしていいか分からなくなった彼なりの優しさであったこと。
「携帯とかあの頃まだお前禁止だったじゃん。スマホもない時代だしさ、連絡も取れないってわかって」
『うん…』
「…………単純に俺の事忘れて欲しかったんだ。…本当にごめん、馬鹿だったわ俺」
別れること無かったよな。とキヨは最後の最後で絞し出したような声でそう呟いた。
その震えた声と弱々しい顔つきには先程の余裕そうな素振りは一切見られなかった。代わりにキヨから読み取れたのは純粋な反省の色であった。
すっと筋の通った彼の言葉に申し訳なさを感じるA。煙草の箱はビニールを軋ませて苦しそうな声を上げた。
数分前までのAはこんな展開に落ち着くとは露知らず、つまらない悪態を付いて悪ぶっていたのが今はとても恥ずかしかった。数分前に戻れたのなら煙草をぶんどって首を無理やりキヨの方へと向かせていただろう。
『ま、まあ…もう気にしてないよ…そんなの。それより飲みなよ！一応おめでたい席だし！』
「俺酒呑まないよ」
『は…』
重苦しい空気を何とかしようと口角の引きつった笑いのまま酒を進めると眉尻を下げたままキヨはそう言って少し笑った。
この見た目で下戸かよなんてAが思考を巡らすもどうやらそうではないようだと先に表情を見た自身の目が訴えた。
もしかしてやめたとか。
「やめたんだよね俺」
『あ、…』
思わず声が出てしまった。だって、予想が、
いや、キヨの事が隅々までわかる気がしたからだった。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
