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彼女が帰ってくる前に風呂を済ませ、当たり前のように彼女のクローゼットを開ける。男物の赤いジャージが目に入るも、それはレトルトのものでは無い。知らない男の服が彼女の家に置いてあるのももう慣れた。
手頃な服が手近に見あたらないので仕方なくそのジャージを身につける。ジャージの持ち主は背が高いのかレトルトの肩身には大きかった。ふわりと香る他人の柔軟剤の臭いは一層レトルトを不機嫌にさせた。
まもなくAが帰宅し、レトルトの服を見てほんの少しだけ目を見開く。しかしそこには悪びれる様子は無く、ただ面白そうに姿を眺める。
「別に着れるものがなかったから着ただけやけど」
『ふふ、はいはい』
何で俺以外を家にあげたの、俺は特別じゃないの？なんて野暮な口は挟まない。強がりの嫉妬なんてとうに見抜かれてる。そのことをレトルトは分かりきってるからこそ彼女のあとを追うように着いていく。
Aが通った道があの柔軟剤の香りで満たされていてレトルトの鼻に嫌についた。
一段落したらまた昨日と同じく二人は寝室で抱き合う。顔に熱を帯びたAが下で強請るように誘い、それに答えるようにレトルトがキスを落とす。こんなにも彼女で充実しているはずなのに、五感で感じるのは昨日を繰り返すような空っぽの愛だけ。
求めるようなAのよがる声がどんなに強くたってそれはレトルト自信ではなく、欲しいだけの飛ぶような快楽。それでも騙し騙しでレトルトは今日もこうして夜に身を任せて彼女に全てを注ぐ。愛してるなんて吐いた言葉は本心なのに今じゃただの台詞に過ぎない。
首に噛み付いて強く跡をつける。まるで花蜜を吸うように。噎せ返る程甘いはずのそれは紛れもない嘘の味がした。
何度跡をつけようが、彼女はまた明日にはレトルトの全てを忘れた様に他の男に身体を委ねて更に遠くへ行ってしまう。いつかレトルトが忘れてしまうくらいに。
それでも自身の愛は本物であるという事実を跡にして残す。
無駄な足掻きでも彼女の愛を感じ取るように、手首を掴む手に再度力を込めてまた同じく花蜜の愛にしゃぶりつく。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
