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キヨはほんの数時間前までその地獄で這いつくばっていた。
言うことを聞かなければ身体の傷が増え、逃げようとすれば嘘か本当かも分からない声で「家族がどうなってもいいのか」と脅す。素直に応じれば下半身が砕けるような痛みに襲われた。
一年もその苦痛に耐えればもう涙なんて出なかった。売り物にならなくなるからと顔だけには手を挙げなかった怨めしい男達にキヨは指示通り甘く啼いてやった。
「死ぬことしか、考えてなかった…」
鼻をすする音が響くと同時に見えない彼の瞳から大粒の涙が零れる。
「死んでしまえば、全部終わると思ってた…」
彼が右手の甲で涙を拭うも拭い切れずびっしょりと濡れた手がキラキラと反射する。
「けど、本当に、俺……生きてて良かった………」
嗚咽を漏らすキヨに対してAはどう接していいか分からなかったがとにかく必死な気持ちで彼を抱き締めた。優しく背中を撫でたりポンポンと落ち着かせるとキヨも安心したのかAの背に手を回して泣き付く。
彼の傷んだ真っ赤な毛先が擽ったくてなんとなく見つめる。きっと売り物として丁寧に染められていたんだなと実感すると余計に同情してしまい回した手が離れられなくなってしまった。
『もう大丈夫、大丈夫だから…』
根拠なんて無い。これっぽっちも。
それでもこの二人だけの悲しい世界ではそれくらいしか思い付かなくてAはただそう呟きながら慰めた。
Aは自身がこうして一人ぼっちで泣いていた昔をこの状況の中、冷静に思い出していた。
あのとき手を差し伸べてくれた人達はこんな気持ちだったのか、なんて感傷に浸るもそんな出来た人間じゃないなと何処かで自分を鼻で笑った。
彼が泣き止むまで傍に居よう。
傷跡のせいででこぼことした彼の背中をまた優しく撫でることにした。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
