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その日は酷く空の調子が悪くて、重苦しい色をした空が鉛を落とすかのごとく大粒の乱暴な雨が雨戸に叩きつけられている。
Aと名ずけた彼女が来て半年が経った。
相変わらず彼女は牛沢の心をくすぐるような仕草で日常を彩り、完璧な彼女として隣居てくれている。
楽しくて、嬉しくて、甘くて、こんな日常が続けばいいと最初に彼女が来た頃と気持ちは全く変わらなかった。
「牛くん」
感傷に浸るかのように外を見つめていた牛沢に対し不安そうな声で呼ぶA。
放ったらかし過ぎたかなんて惚気もいいとこの反省をしていつも用にどうしたのなんて聞き返しながら歩み寄ろうとした、
が
「…………どういうつもりだよ、A」
彼女が突きつけていた包丁を前に牛沢は顔色ひとつ変えずに足を止めた。
突きつけている本人といえば震えた唇に怯えたような瞳で両手でしっかりと包丁を牛沢に向けている。脅しのつもりか、はたまた本当に息の根を止めたいのかはまだ読み取れない。
「どうも、こうも……ずっと騙してきたんだね、牛くん」
騙してきた。その表現にぴくりと眉が反応するのは牛沢自信に覚えがあったからである。
彼女からその後ろへと目線を外す。伏せていたあの写真立てはまたきっちりと立て直されている、が牛沢が目を向けたのはその一番下の引き出し。遠目からでも確認出来る引っ掻き回したように散乱した何枚ものTシャツと1枚だけ一面血で赤黒く固まったTシャツ。全て今の彼女が着ているものと全く同じブランド同じ型番同じ柄ものである。
「あの日、私は殺された。この包丁で」
そう、俺は殺した。元恋人、いや元人間のAという女の子を。
あの日も同じような土砂降りの雨で、俺は別れて欲しいと離れていこうとしたAを泣いて止めた。彼女には幸せになって欲しい。しかし「他に好きな人が出来た」なんて理由ひとつで牛沢の気持ちは大きく変わった。突然過ぎたのだ、あまりにも。
うざったい、そんなしかめっ面で彼女が最後に言い放った一言は「もう貴方の事なんて好きでもなんでもない」だった。
悔しくて悲しくてそして頭にきた。カッとなって手に取ったのはちょうど夕飯の支度で使っていた包丁だった。
本当にに刺す気なんてさらさらなくて、脅しのつもりだった。けれど正気に戻った時には彼女の息の根は完全に止まっていた。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
