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当てずっぽうでも、ましてや狂ったわけでもなかった。レトルトは雨が型どるその姿をよく知っている。透明なナニカを確実に華奢な立ち姿と見定めた彼はその空間に手を触れる。
『……うそ』
確かな感触と体温がそこにはあった。安心するような温かさを彼女の生前、レトルトは幾度となく触れていたし、愛していた。
涙ぐんだ瞳をぱちぱちと瞬きでなんとか見れる状態にして両手にその温かみを感じる。
刹那、触れた部分から絵の具が水溜まりに落ちたかのようにじわりと滲んでいくようにその形に鮮明な色がついていく。
『あ…』
「A……」
互いに動揺と混乱の目をして目を合わせる。
数秒、雨音すら聞こえないくらいに彼等は夢中になって時を忘れた。
凄まじく二人に降りかかる雨のせいでレトルトはぐっしょりとずぶ濡れになるも、Aの方は本当にその場にいるのかと言うほど一滴の雨にも濡れずにレトルトを見上げている。
濡れていないのはその通りその場にいないからであり、人外であることを痛いほどによく表している。
「あ、…あのね……」
そう言ってまたマスクの下の口は中途半端に開きかけたまま噤んでしまう。
『言ってよ！』
「えっ…」
『言ってよ、その先を！いつもそうじゃない！』
涙ながらに叫んだ彼女にレトルトが一瞬呆気に取られる。しかし瞬時に合点がいく。そうか、彼女はずっと俺の傍で見てきたのか。墓を目の前にしてすら何も言えなかった臆病で無様な俺を。
もう二度とこんなチャンスは無いかもしれない。これが本当に本当の最後かもしれない。
バクバクと心拍をあげる胸を抑え、寒さと不安に震える唇をレトルトは開いた。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
