【Free!】林檎【山崎宗介】Part3

第88話 ページ8

「はぁ……ずびっ」

鼻水が止まらない……ついでに涙も
止まらない

机の上にうつ伏せになって泣くなんて…初めてだよ

濡れない為に敷いたタオルも、もう湿ってる

兄さん……今何してるかな

会いたい、会いたいよ…

会って、今すぐ好きって言ってよ…

見るたび、想うたび好きになる

目を逸らしても、逸らしきれない

いつだって、私の近くにいる

いつだって、優しくしてくれる

いつだって、いつだって…兄さんが好き

嫌いになれない

…もう、駄目なんだ

この想いに気付いた時点で、もう…

逃れられない

逸らしちゃいけない、分かったフリなんてしちゃ駄目だ

見つめ合わなきゃ、この恋と

「兄さん…」

小さな声で、呟いた

腫れた目を擦りながら頭を起こす

…バカだ、私は

一人で泣いても仕方がない

兄さんに、迷惑なんてかけたくなかった……

でも、私が兄さんを好きになってる時点でもう…

「すき、すきだよ……にいさ…」

チュ…ッ

痛い、首が痛い

唇には優しい感触、暖かい体温

そして、瞳を開けると…

私をまっすぐ見つめる兄さんの顔があった

「なんでいるの…？」

「うるさい」

「…私たち…兄妹なんだよ……」

「関係ねえ」

顔を離した後、兄さんの胸に顔を埋める

「ばかじゃないの…」

そんな素直な言葉のせいで、悲しみが吹っ飛んだ

でも相変わらず涙は止まらなくて、兄さんのシャツを湿らす

「俺はお前が好きだから来たんだ」

兄さんの言葉が嬉しくて、少し笑ってしまう

何故か、照れ臭いなぁ

「………母さんとか、入って来たらどうするの」

「そん時はそん時だ」

「あのねぇ…」

ばかみたい

……ばかみたいなそんな言葉たちが私の心に刺さる

こんなに好きなのに、なんで今まで我慢してたんだろう

気持ちを封じ込めてずっと悩んでた

ばかみたいなのは、私の方だったんだね

ギュッ

兄さんの腰に手を回して、シャツを握る

「好きって言っても…良いのかな」

「………当たり前だろ」

そう言うと、兄さんは私の頭に手を置いて髪をくしゃくしゃにして笑う

その顔が、愛おしくて堪らなかった

第89話→←第87話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す