【Free!】林檎【山崎宗介】Part3

第94話 ページ14

「兄さん、ちょっと公園行ってみよう？」

卒業したての兄さん

この春からは大学生の兄さん

もうここに帰って来る事は少なくなるから…

「……良いぜ」

「やった」

少しでも、頭に残しておきたいの

兄さんとの記憶を

ー公園ー

「んーっ！！……っはぁ、やっぱり
久しぶりだね」

毎日通る公園だけど、入る事はなかなか無いからそう感じた

「そうだな」

少し呆れたような顔で、兄さんは私を見る

そしてベンチに腰をかけた

だから私も、その隣に座った

少し距離をとったけど、そんなのはすぐに埋まってしまった

十センチの距離を埋めたのは、兄さんだった

チュ…

距離は零センチ

唇と唇が触れ合って、体温を高めて行く

「なに？いきなり…」

冷静を装うけどやっぱり恥ずかしい

こんな顔見せるのは、もう兄さんだけだよ

「これも、久しぶりだな？」

悪戯な表情を浮かべて、私に言う

「もう…っ！」

益々顔が赤くなる

どうしてだろう、恥ずかしいのに、楽しい

兄さんといると常にこんな気持ちなんだよ

ー帰宅後ー

「A、俺ちょっと買い物行ってくるから」

兄さんがそう口にした

現在の時刻、午後九時半

…………………兄さん、明後日には発つんだよね

もう、頻繁に会えなくなるんだ

「行ってらっしゃい」

あれから私たちは普通の兄妹として毎日を過ごしてる

これで、良いのかな……なんて、最近思うんだ

私たちは同じ気持ちなのに、こんなにも近くにいるのに……

どうして結ばれないんだろう？

そう考える事が多々あった

分からないんだ

答えがあるなら……誰か教えてよ

ピンポーン…ピンポーン

そんな時、玄関のベルが鳴った

誰だろう？こんな時間に…

「はーい！」

カチャ…

「…………A」

玄関の前に立って私の名前を呼ぶのは、真琴先輩だった

「どうして…？」

テンパってしまって、唇が震える

それに合わせて声も震えてしまっていた

「ごめんね、もうヨリを戻そう何て言わない。けど……話してない事があったんだ」

話してない事…？

なんで？私にはそんな事無…

「これ、A………どうしてた？」

ジャラ…ッ

真琴先輩の掌には、少し暖かい指輪のネックレスがあった

手に持って来たのかな…

「ずっと失くしたままで……真琴先輩、なんで…」

「…………A、これから言う事に
答えてね？」

いつもの真琴先輩じゃない気がした

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