【Free!】林檎【山崎宗介】Part3

第93話 ページ13

「A…！」

「世良先輩……突然、すみませんでした」

私の後を追ってきた世良先輩

引き止めて、くれるのかな

「お前…陸が合わないってどういう事だ」

「そのままの意味で…」

「違うだろ！…お前は大会でも結果を出してる。それなのに…」

「すみません」

私には謝る事しか出来ない

今までずっとやってきた陸上を止める理由があるから

それは、教えられないけど……

「……人は、好きな人の為ならなんだって出来るんです」

「は…？」

ボソリと呟いたから、聞こえてないよね

ー翌日ー

「ねえ、山崎さん、橘先輩と別れてすぐ他の人と付き合ったんでしょ」

「えっ浮気してたって事？」

「んー…でもあのくらい綺麗なら彼氏くらいすぐ出来るんじゃない」

「ふぅん…」

ねえ、聞こえてるよ

良かった、真琴先輩が卒業してて

っていうか浮気かぁ……しかも新しい彼氏出来たとか…

七菜香よく思いつくなぁ

それを信じる皆もどうかと思うけど……

「A、七菜香に怒った方が良いよ」

「大丈夫だってば」

……優姫はこんなに優しい

私の事を、ちゃんと考えてくれてる

嘘なんかついた事無いし…

優姫…ごめんね

私、優姫に隠してる事、あるよ

「Aさん、あの…」

肩に手を触れられた

振り向くと、そこには怜くんの姿があった

「僕たちはいつだってAちゃんの味方だから！…ね？怜ちゃん」

怜くんの後ろからヒョコッと出てきて渚が言う

「……っ、勿論です！陸上部辞めたと聞きましたが……本当ですか？」

「うん。私の夢は、陸上で世界に行く事…だったんだけど、変わったんだ」

「なんで？」

渚が聞き返す

「好きな人が出来たの。私は、これからその人について行く」

どう思われたって良い

一途な気持ちは、もう変わらない

「……僕、絶対応援するよ！」

沈黙を破ったのは、渚だった

その顔は必死で、今すごく嬉しい

「…Aさんが好きになる人ですから、良い人に決まっています！」

怜くんが自慢気に言う

「橘先輩との事は残念だけど……Aは自分の理想を築けば良いよ」

優姫は私の頬を優しく叩いて言った

「ありがとう……」

この人たちと、出会えて良かった

こんな関係になれて良かった

私の恋を、きちんと応援してくれてる

それだけで、嬉しかった

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