ねぼすけの君に (ページ15)

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ねえ、15 ページ15

(your side)

昨日の今日。
大学の後オフィスに来てはみたものの、やはりまだ緊張する。
昨日、あんなに勇気を振り絞ったじゃないか。
あの勇気今は残っていないのか私。

残っていない勇気をドアノブを捻ることに割いてしまったらしく、どうもドアを開けられない。
私がドアノブを触ってから3分。
中からなんだか騒がしい声が聞こえてきた。

なにかの一大事だろうか、そう思ってさっき怯んでいたのも忘れて勢いよくドアを開けてしまった。
そうすると、目の前にはひとつの本をめぐってツイスターのような体勢をする伊沢さんと川上さんとこうちゃんの姿があった。
正しく言うと、後ろに棒立ちで穏やかな笑顔を浮かべたふくらさんもいた。

「あ、Aちゃん、こんばんは。なんか騒がしくてごめんね。」
『こ、こんばんは、ふくらさん。みなさんもどうも……。』

「こんばんは、Aさん。あ、今ね、伊沢さんが……。」
「あー！おい、川上！ここ邪魔になってるだろ！落ち着こう！な！」
「こんばんは、今、伊沢さんの本見てたんですよ。」

『伊沢くんの、本…？みなさん、どんなの見てたんですか？』
「あー！俺お腹減ったかも！みんなでどっか食べに行かない！？」

変に慌てた様子の伊沢くん。
何をそんなに隠しているんだろうか。
私に見られたくないような物……。
心当たりがない。なさすぎる。
私の好奇心がだんだんと膨らんでくる。
その本が一体何なのか、気になるほど、隠しているものの正体はわからなくなる。
人間の探究心を抑えられるような人はクイズなんてやらないと私は思う。

『川上さん、これどんな本なんですか？』
「伊沢さんに聞けばわかるよ。」
「ちょっ、川上！」

『伊沢くん、ご、ご飯の前にこれの中身教えてください！』
「いや、それは……。この中身なんてちょっとしたクイズ特集だから。」
「教えたらAちゃんが夕飯作ってくれるらしいよ。そうだよね？」
『えっ？あっはい！作ります！中身、教えてください！』

なんで私の手料理が出されたかわからないけれど、ここまできたら見たい！という気持ちが抑えられるはずはなかった。
ますます気になってしまう中身を私の手料理なんかで引き出せるとは思えないけれど。

「Aちゃんまで悪ノリしないでよ、あー、もう、なんか自分が阿呆らしくなってきた！いいよ、わかったから、勝手に見れば？」

そう言っていきなり本を私に渡してくれた。
代わりにふいっとそっぽを向いてしまったけど。