雪恋。

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でも嫌なものは嫌なんだもん。

行きたくなくなってきた。


「濱ちゃん、他のみんなの意見、聞いたほうがええんちゃう？」


桐山先輩のヒソヒソ声が聞こえてる。


「ええに決まってるやん。
白鳥さんが来てくれるなんて、
女子メンバーも喜ぶはずやって。
なあ、シゲも神ちゃんもそう思うやろ？」


「えっ、あ、はい。
大勢のが楽しいし、ええんちゃいますか」


「そうかもしれませんね」


重岡と神山くんがそう答えたら、
桐山先輩も、もうそれ以上は、
何も言わなくて。


「白鳥さんと飯会て。
社内中の男に刺されてまうかもな」


濱田先輩、もう羽根生えて、飛んでいきそうだ。

本当に、みんなの憧れなんだな。


白鳥さんはコネ入社で、
うちの社のお偉いさんである、
中間課長のお父さんの親友の娘さんなんだって。


コネなんかで入らなくても、
あんな綺麗で優秀で、
余裕で合格間違いなしなのに。


白鳥さんが、
中間課長と親しいから、
それで麻衣子は余計に嫌ってるのかも。



それからも、
広報部のメンバーで、
ずっと白鳥さんをちやほやしてるから。


聞いてられなくて、
急いで、ご飯かきこんで、席を立つ。


トレイ、片付けてたら、
桐山先輩がやって来た。


「麻衣子ちゃん、
Aちゃん、
ごめんな。
さっきの、聞こえてた？
急に白鳥さんも来ることなってもうて」


桐山先輩は、麻衣子のこと、
特別に思ってるんだと思う。

それはなんとなく感じてた。


「あの人来るなら、私、行きません。
白鳥さんて偽善者だし、ぶりっ子で、
二重人格で、大っ嫌い」


麻衣子がそう答えた。

ここまではっきりしてると、
逆に爽快だ。


「そんな言い方はないんちゃう？
白鳥さんも同じ社員やろ？」


きつい口調でそう言ったのは、
桐山先輩じゃなくて、
どこからか現れた中間課長だった。


いつから聞いてたんだろう。


麻衣子の目に涙がたまってく。


麻衣子が泣くところなんて、
入社して以来、この３年の付き合いで初めて見る。


「課長、いくらなんでもきつ過ぎますって。
女の子には、俺らに分からんような複雑なことが、
色々あんねやろうし」


桐山先輩がフォローしたけど、


「私、間違えてません。
プライベートでまであんな人に会いたくないから」

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