雪恋。

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ついに金曜のバレンタイン当日がやって来てしまって。

朝からそわそわ。


昨夜、


『明日、チョコ忘れんといてや』


重岡らしい、追加のおねだりラインもきて。

いやが応にも、期待値は高まり中。


白鳥さんのことは、一旦、忘れようって決めた。


今、重岡と距離が近いのは、
どう考えたって、
私の方。

ダイジョウブ。



昼休みの社員食堂。


昨夜、中間課長と喧嘩したって、
麻衣子は、ずどーんと落ち込んでる。


「今日、同期会やるって言ったら、怒ってるの。
怒ってないって言うくせに、
すっごく、声怖かった・・・
自分が会えないって言ったくせに」


もう今にも、泣いちゃいそうだ。


「あの優しい課長が怒るなんて信じられないよ。
電話だからそう聞こえたんじゃない？」


つい、課長、って言っちゃった。

社内では内緒なのに。


「しぃっ」


麻衣子が、周りを警戒して、きょろきょろしてる。



ちょうど斜め後ろ、
重岡たち、広報部のメンバーが、
席に着いたから。

途端にそわそわしてくる。


全神経が背中に集まってく。


「ここ、いいですか？」


すぐ後ろで、
白鳥さんの声がして、
嫌な予感が駆け巡り始めた。


「もちろん。
白鳥さんみたいな綺麗な人と昼飯って最高やな。
な！シゲ！」


濱田先輩の浮かれた声が続く。


「お、ああ、うん。
どうぞ」


重岡の声も。


今頃、鼻の下、伸ばしてるんだろうな。


「今日の夜って、皆さん、
何か予定とか、あるんですか？」


白鳥さん、グイグイ攻める。


自信が満ち溢れてるんだろうな。


「ああ、うん！
会社のみんなで集まるねん。
良かったら白鳥さんもどう？
て、来てくれるわけないか」


また浮かれた濱田先輩が余計なことを。


「いえ、是非、行きたいです。
みんな仲良さそうで、羨ましくて。
同じ社員なのに、
私だけ蚊帳の外で、
寂しいなって思ってたんですよ？」


白鳥さんの声も浮かれてる。

重岡狙いだって噂、真実なのかもしれない。


せっかく、気の合うみんなとの飲み会が・・・

白鳥さんをちやほやする会になっちゃう。


私、心が狭いな。


白鳥さんだって、同じ会社の人なのに。


来たら嫌なんて、そんなの・・・

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