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 目を開いた瞬間、ふっとその柔さが離れる。……ちょっと名残惜しそうな、でも優しいキス。問の体温が、触れている全てのところから伝わってきて、この鼓動すら聞こえているんじゃないかと不安になる。……でも、たぶん私と彼の心臓はほとんど同じテンポを刻んでいるんじゃないかな、……なんて。

『問──』
「……あ〜待って」

 そんなことを思いながらふと名前を呼んだら、急に問がばっと私の肩に頭を預けた。温かい重さが右肩にのしかかる。

「……待って、今日は」

 今日は、帰したい。まだハスキーな声が鼓膜を揺らす。なんとなくその髪を梳きながらそれを聞いて、どくりと鼓動が鳴った。

『……「今日」は?』
「突っ込むとこそこなの?」

 からりと軽く笑う問の声に、少しだけ欲が混じっているように思えて、……なんて私の気のせいなんだろうけど、また顔に血が昇るのを感じた。

「……ごめん、僕の心の準備が、……ね」

 ぎゅ、と彼がもう一度私を抱きしめて、背中にその手が回る。……やっぱり、男の子だなぁ。隣にいるだけではわからない、触れ合って初めてわかるその長い腕。私より少し高いくらいの身長なのに、包み込まれてしまうのはどうしてだろう。その黒い髪は、前にどうやっても襟足が暴れ狂うと嘆いていた時のまま、ふわふわと広がっている。

『……ねぇ、問』
「ん?」

 ……ああ、なんか今なら、いつも言えないこと、言えそう、かも。心の中で本音を堰き止めている何かが、溶けて機能しなくなっていく。問の体温と、私の体温が混ざり合って、溶けていく──。

『……もっかい、キス、して』

 囁くような、空に攫われて消えてしまいそうに小さな声だった。は、と息を吸う音がする。……それは私のか、それとも、彼のか。再び肩を掴んだ指先に力が籠る。



(……問)



 もう一度唇が重なった時、心の中で、彼の名前を呼んだ。

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鳩麦こおり(プロフ) - 犬子さん» そう言っていただけて嬉しいです...! ありがとうございます🥰 Wデートの更新はだいぶ時間がかかると思うんですが、気長にお待ちいただければ幸いです🙇‍♀️ (2月18日 10時) (レス) id: 5ea5a9dd22 (このIDを非表示/違反報告)
犬子(プロフ) - 初めまして。年上彼女×mnの組み合わせと主様の表現力に終始ニヤニヤしつつ読ませていただいています!gnちゃんもかわいい…Wデート、拝見できると嬉しいです…。大変尊かったので思わず感想をお送りしましたm(__)m (2月16日 1時) (レス) @page13 id: 7ba156e249 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩麦こおり | 作成日時:2024年2月4日 13時

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