第六十話 ページ10
もう既に日は落ちかけている為、クロも人型に戻る事も出来るにも関わらず歩くのが面倒くさいという理由からいつも猫の姿で肩に乗っている。今日もそれは変わらずその状態だったのだが、ここからは話が違う。
「じゃあ、クロ。お前人型になれよ」
「はあ?なんでだよ…別にこのままでいいだろめんどくせー……」
「さっきも言っただろ?部屋までは下位吸血鬼の人が案内してくれるって話にはなってるけど、他の店員に猫姿のお前を見られて注意されたら面倒だからってさ。」
「はあ……。ったく、しょうがねえなー…」
そう心底面倒くさそうな声で悪態をつくとクロはぴょん、と真昼の肩からアスファルトの地面へと綺麗に着地し、とことこと路地裏の影へと隠れると人型になって戻ってきた。
人通りも多いこの通りで突然猫が人の姿に変身したら大騒ぎになってしまう。当然の行動だ。
「リリイも……」と声を掛けようとしたところで、御園の頭にちょこんと乗る蝶の姿のリリイを見て真昼はその言葉を飲んだ。
『リボンを頭につけている男子校生』というのも少し奇妙に思える光景だが、注意されることはないだろうと考え、この2人に関しては特に言及しないことにした。
そして、他に忘れていないことがないかを頭の中で確認し、それがないと確信すると真昼は「よし」と一息置いてから一同へと声を掛けた。
「じゃあ、とりあえず入ってみるか。」
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ガチャり、と少し重みのある扉を開けてリヒトはAの待つカラオケ店の個室へと戻ってきた。
Aはそんなリヒトへ声をかけるべく視線を向けたが、スマホを片手に部屋へと戻ってきたリヒトの表情は暗いものだった。
「マネージャーさんとの電話はもう済んだの?」
「ああ。何でも、講演中の演出を少し変えるらしいから戻ってこいと言っていてな……。」
「そうなの。じゃあ、リヒトはもう帰らないといけないのね。」
先ほどのマネージャーからの急な電話の内容と言うのは、目前に控えたリヒトの講演についてだったようだ。急に呼びつけるのだから、大事な用件に違いない。リヒトもそれを分かっているのかいつもより眉間に深く皺が刻まれている。
「……悪いな。せっかく来たのに。」
「いいのよ、講演を成功させる為でしょう?大事な事だわ。」
「そうだな……。今度また、この埋め合わせはする。」
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サキ(プロフ) - こちらの小説ってもう更新されないんですか? (2018年5月3日 13時) (レス) id: 21861887f2 (このIDを非表示/違反報告)
日和 - はい!私生活に余裕が出て、暇があったらぜひ更新してください! (2016年8月20日 22時) (レス) id: 40ecd8018d (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - いなさん» コメントありがとうこざいます、ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません……コメントいただけて嬉しいです、頑張りますね! (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
はちくま(プロフ) - 日和さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。ちょっと今私生活がバタバタしておりますのでもう少々お待ちいただけると幸いです、すみません…… (2016年8月3日 7時) (レス) id: 5e438ae83b (このIDを非表示/違反報告)
いな - ずっと待ってます!更新頑張ってください!!応援しています!続きが楽しみです! (2016年8月2日 23時) (レス) id: 1536a576c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちくま | 作成日時:2015年5月21日 5時