検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:6,275 hit

19 ページ19

それから少しして、私とご主人様はあの街に出かけた。ご主人様が知り合いに頼んで作ってもらったというクリスマスローズの花束を持って。花言葉は『追憶』と『慰め』。
 潮風に白い花が揺れる。まるで少女のように純粋なその花弁に、胸が締め付けられた。
 二年前、ここで殺された少女達がいた。罪のない彼女達が殺された理由など、あまりに身勝手なものなのだろう。どんな理由があっても殺されていい命なんてないと、私はそう思っていたい。どんな命も全て尊いものだと思っていたい。

「サイファ」
「はい」
「今だけで良いから、手を握っていてくれるか」

 私はご主人様の顔と手を見比べた。そして優しくそっとご主人様の手を握り締める。ご主人様は私の存在を確かめるように、何度か手を握りなおした。
 きっとこの世界は美しくなんてないのかもしれない。それでも、私はこの目に映る美しいものを、虚像だなんて思いたくはない。
 この人がくれた色も、愛も、私は見ていたいのだ。それがただの果てのない闇だったとしても、それが貴方のくれた色で、愛だと私は知っている。
 潮の匂いを混ぜた甘い風が空高くへ白い花びらと共に吹き上がった。それはまるで誰かが舞踏を踏むように軽やかで、美しかったことだけは記憶のうちに鮮明に焼きついていた。

エピローグ→←18



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 人外 , 依存   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:音霧 想 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年10月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。