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「確かに、あの子は異端になった。その結果は紛れもない事実だし、否定しても、隠しても確かにあったことだ。そして我はそんな罪のないあの子を殺した。我は優しなんてものはとうの昔に忘れてしまったからな。
優しさというのは言い方さえ変えてしまえば、一種の独りよがりで、自己満足、或いはエゴでしかない。だがそれで誰かを幸せにした時、そのエゴははじめて優しさになる。黒さんは誰かを幸せにするエゴを持っている。それだけでいいと我は思うよ。その優しさは黒さんにしかできないことなんだからな。
確かに、黒さんはあの異端の死に際に強い光を見せてしまった。生というあの子にはもう二度と手に入らない光だ。だがそれで良かったと思う。あの子はきっと何も言わず死んでしまった家族への想いで、現世を彷徨っていた。けれど、黒さんに触れて、あの子は自らの罪を多少なりとも断つことができた。それでいい、それだけでもいい。黒さんはあの子のことを救えたんだ」
「そう、なのか」
「ああ、ああ。きっとそうだ。同族の我が言ってるのだから、それでいい」
ノルデ様がそう言うと、ご主人様は顔を少し上げた。その顔は穏やかで、さっきよりもずっと楽になった。そんな顔をしていた。
「悪いな、ノルデ。お前にいつも汚いことばかりさせて」
「構わんさ。我はそれくらいしかできないからな」
ノルデ様はカラカラと笑ってみせた。
「サイファちゃんもよく頑張ったな」
そう言うとノルデ様は私の頭を撫でてくれた。先日のノルデ様と同一人物には見えないが、普段はこういう人だ。
私が「ありがとうございます」と笑いかければ、ノルデ様もそれに答えるようはにかんだ。
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