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私はただ口を結んだ。あの異端にご主人様を奪ってほしくはなかった。ただ、あの異端は、あの子はきっと私と同じだった。優しさをくれたあの人にすがりついただけだった。そんな子から私は光を奪った。
 悔しくて、非力で、申し訳なくて、色んな感情が入り混じって視界が滲む。今度は堪えきれず、涙は瞳から零れた。ああ、生きるって身勝手だ。生きるって強欲だ。
 ルシファー様はその様子を見て、そっと抱きしめてくれた。

「君も優しい子だね。誰かのために泣けるのは、君が優しい証拠だ」

 子供をあやすように、ルシファー様は呟いた。

「忘れないでね。その優しさを。忘れたら、二度と戻れなくなるから」

 ルシファー様の掠れた優しい声が、やけに耳に残っていた。
 多分私は、私のことが大嫌いだ。

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設定タグ:オリジナル , 人外 , 依存   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:音霧 想 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年10月20日 22時

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