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第29話 軍師エミル ページ28

今日に会議があるのだという情報が手元に回ってきたのは、寝起きで弱っていた時だった。
また仕事かと思うと共に、今回は幾数の命をこの手で握り潰すのだろうと劣等感に苛まれた。
ベッドに縫い付けられたかの如く、身体が動かない。
思考だけがじゃじゃ馬のように暴走し、自我や正常な頭脳を蹴散らしていく。


俺の考えた作戦に、穴があったとしたら? 相手方に手が読まれているとしたら?
俺が味方に直接手を下している事と、そう大差無いだろう。
どちらにせよ、どんな作戦でも、試行すると相手方の不特定数の人間を殺める。
それが例え多くても、少なくても、命の重さは変わらないのだから、罪の重さは変わらない。

俺は重罪人だ。死刑囚だ。

俺だろうが誰だろうが処されたところで、潰した数多の命が再び戻る事は無い。
そんなことは、ずっと前から分かっている。
どうせ俺は、解放されたい、楽になりたい、と結局は自分の事しか頭に無いのだから。
家族という枷をはめ、過去という檻に囚われ、罪悪感という闇に放られて。
俺は、身動きが取れないでいる。


なんて、滑稽。


なんて、酷刑。


それでも、いまだに自ら現実の手綱を放せないでいるということは、
自分が他人の分まで罪を被る事を、罪滅ぼしという名の生き甲斐にしているのだろうか。
だとすると、手綱を放す時は、この体を存分に使いきった時になるのだろうか。
早く終らせてくれと急かされる半ば、まだここでなにかできる筈だと押さえられる。
ぐちゃべちゃと下品に、汚いものをひっくり返して混ぜているような脳内に倦怠感を覚えた。
無意識で、無駄に能力を使ってしまったように感じられる。
先ほど起きたばかりに関わらず、目蓋と意識がふわふわと舞いだしたので確信した。

それは変な方向にずうっと考えちゃうわけだなあ。


おぼろ気な世界で、目元を舐めてきたハートを捕らえた。
「くらいね。とってもくらいよ。」
そう思ったのを最後に、悪夢の門を叩いた。

今回の会議は、烏の如く真っ黒な悪夢に食われたせいで参加できなさそうだ。




一時的に手綱を放している一人の横で、変わりにそれを食わえている一匹が、
一人にそっと寄り添うように、見えぬ何かから一人を庇うように、目を光らせていた。

第30話 陸上部隊副隊長イーエース→←第28話 軍師エーギル



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桜吹雪@低浮上(プロフ) - 更新しました! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@低浮上(プロフ) - すみません!書き直しますので更新します! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 書くの忘れてました!すみません!更新しました! (2020年10月9日 18時) (レス) id: aafc5aee29 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 更新します! (2020年10月6日 19時) (レス) id: c919c9fb7a (このIDを非表示/違反報告)
するふぁ@givehappiness(プロフ) - 更新しました (2020年3月3日 16時) (レス) id: 07edb2e3d3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:グラーヴ連邦同志一同 x他4人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年1月8日 20時

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