第13話 軍医 リオット ページ14
カタカタ、ガチャガチャと鞄の中身が揺れる音がする。
切れる息、足りない酸素。
僕がなぜここまで辛い思いをして急がなくてはいけないのかといえば、我らが書記長殿からの召集の命があったからだ。
数分前にインカムから入ってきた短い音声。
『今すぐ会議室に来い』
いや、僕が医務室とかにいるならゆっくり行ったのだけれどもね?
僕は今、自ら医務室に来ない愚患者共を治療するために部屋や訓練室を巡回中だったのだ。
しかも、インカムが入った時には会議室の真反対、なんなら別棟だ。
しかし書記長殿からの命令は絶対。
死んでも守らなくてはならないのだ。
……まあ、軍医が死んでもなんて言ってはいけないが。
あまりにも呼吸がままならず、一度立ちどまる。
しかし早く行かなくてはいけない。
はあー、と大きくため息をついてから前を見据える。
目標は会議室、残りの距離は約400m。
「……ッはー、全く……ッ!」
思わず皮肉とも取れる笑いが、息とともに零れる。
あとちょっとだから。
自らをそう鼓舞しながら、足を踏み出せばブーツのヒールの音が廊下に響いた。
会議室の扉は両手開きの重圧な存在感と威圧感を放つもので、何時でも緊張する。
鞄を足元に置いたまま扉を三回ノック、扉を開けて声を張り上げて到着を告げた。
「軍医リオット、ただいま馳せ参じました!
招集から遅れてしまったこと、大変申し訳御座いません!
失礼致します!」
目の前には我らが外交官殿がへらっとした態度で立っていた。
……何となく様子がおかしい。
いつもなら胸を張っていて凛とした立ち姿なのに、今は少しばかり猫背に見える。
そこまで考えてから、脳内に一つの可能性……というか、もはや確信だが、考えが浮かんだ。
「……外交官殿、後で、医務室……ね?」
ハクロくんの肩にそっと手を置きつつ、笑みを浮かべて囁く。
軽くハクロくんが肩を震わせたような気がするが気のせいだよ、うん。
書記長殿に軽く向き合ってから会釈をして、僕の上司でもある軍医殿のそばまで身を縮こまらせながら小走りで向かい着席した。
まあ、もし仮にも万が一、ハクロくんが逃げるような事があったら能力を発動させなきゃな。
胸ポケットにある鍵をそっと撫でつつ、そう決意した。
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桜吹雪@低浮上(プロフ) - 更新しました! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@低浮上(プロフ) - すみません!書き直しますので更新します! (2021年9月4日 14時) (レス) id: 52e526ba44 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 書くの忘れてました!すみません!更新しました! (2020年10月9日 18時) (レス) id: aafc5aee29 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪@自作小説低更新(プロフ) - 更新します! (2020年10月6日 19時) (レス) id: c919c9fb7a (このIDを非表示/違反報告)
するふぁ@givehappiness(プロフ) - 更新しました (2020年3月3日 16時) (レス) id: 07edb2e3d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:グラーヴ連邦同志一同 x他4人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2020年1月8日 20時