謎の家系図 ページ5
「見世物ではないんだけどなぁ…」
「そう言って。A番なら見せてくれるって信じてきたのよ。とても優しい子だもの」
「そうよ。どうぞ見せびらかして自慢なさいな。心からのお祝いを言って差し上げるから」
「君らキラキラしたものが見たいだけじゃん…」
そうなのだ。この二人は、キラキラしているものに目がない。それなら甘いものが好きな私のほうがまだ赤血球らしいような…。
そう呆れつつも、わくわくと目を輝かせている二人がなんだか可愛らしくて、私は残りのたい焼きを口に押し込むと、手を払ってからそっと左手の手袋を外した。
「あら…」
「すごいわぁ、とっても綺麗ね…」
ほう、と息をつく二人だが、正直言って私も何度でも見惚れるくらい、この指輪は本当に美しかった。造り自体はシンプルなのだが、唯一の飾りとして輝く桃色の石が、これをくれた人の思いをたたえていつだって輝いている。
「ねえA番、この石が何でできているかご存知?」
「ガラスって聞いたよ。抱えられないくらい大きい桃色のガラスから切り出してきたものだって」
「そうねぇ。ガラスは時折入ってくるけれど、こういう風に色がついているものは結構珍しいのよ。これを用意してくれたあなたの…フィアンセ?は、本当にあなたのことが大好きなのね」
「…へへ、わかる?」
「ん〜もう、本当にかわいくなっちゃって!ああ大変、お姉様が嫉妬で怒り狂ってしまうわ。ねぇ、1877番さん」
「本当よ。今まで大事に大事に育てていらっしゃったのに」
「ねぇ」
大変ね、と二人はくつくつと笑う。
「お姉様」と二人が言っているのは、うちの班長であるあの筋肉オカマの先輩のことだ。私が新人としてやってきた頃からすでにそのように呼び慕っていて、つまりBD班には〔長女:6500番、次女三女:1777番と1877番〕という謎の家系図ができつつある。
それはともかく、と私は手袋をはめ直して、たい焼きを包んでいたごみをごみ箱へ捨てると、運搬途中だった二酸化炭素を抱えた。
「お仕事続けないと。あの先輩、BD班員に対しては謎のレーダー搭載してるから、いつまでも休んでたら見つかっちゃう」
「あらあら、ひょっとして本当にお姉様には指輪見せていないの?」
「なんか、まだ小恥ずかしくて」
「あらあら」
「親に交際相手のことを言い出す勇気が出ない娘の心情なのね。1777番さん、ここは生暖かく見守って差し上げましょう?」
……世話焼きな狐目の姉妹二人を後ろにしていると、どうにも居心地が悪い。
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まじかるれいん☆ - オザさん» ヘイ!気に入りました!即興ってところがすごい(°▽°) (2018年9月4日 21時) (レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
まじかるれいん☆ - オザさん» ヘイ!気に入りました!即興ってところがすごい(°▽°) (2018年9月4日 21時) (レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - オザさん» アルミ缶にするわ← うん!よろしくね〜 (2018年9月3日 21時) (レス) id: 626aa5da43 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - 水無月さん» ありがとう!手を怪我して赤血球さんが大変なことになるので握り潰すのならアルミ缶くらいにしておいてください…今作もよろしく!! (2018年9月3日 20時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 続編おめでとう!いや、今回も尊すぎて缶を握り潰しちゃいそう…w 更新頑張ってね!楽しみに待ってまーす! (2018年9月3日 19時) (レス) id: 626aa5da43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オザ | 作成日時:2018年9月2日 17時