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31 記憶と腐れ縁 ページ33

38にそんな昔話をしていたせいか、久しぶりに胸腺へと足を運びたくなった。

周りには沢山のT細胞候補生達が、訓練に励んでおり、どこか懐かしいその風景に、少しだけ目頭が熱くなる。

胸腺を下り、肺に差し掛かったところで、おぉいと自分を呼ぶ声が上から振ってきた。見上げると、普段通りどこから持ってきたのか小型の液晶カメラを片手にこちらを見下げる樹状細胞と目が合う。


『…!樹状くん…!』

樹「久しぶりだね、A番ちゃん。がん細胞の時以来かな」

そう言って微笑む彼の笑顔は、どこか奥にどす黒いものがあるように見えて、やっぱり慣れないな、と肩を少し震わせた。


樹「そうだ、久しぶりだし最近あった面白い話でも聞かせてよ」

『聞かなくても分かるだろうに…』

樹「いいじゃん、サイトカインばらまいちゃうよ〜。ほら、こっちこっち」

彼はそう冗談半分に軽く脅し文句を言うと、私の腕を引っ張って、ずるずると丁度いい木陰を作ったテラスの椅子に座らせてくる。
特に断る理由もなかったのでこれを承諾し、出された焼き菓子に手をつけようとしていたその時に、樹状くんがいつもの笑顔を顔に貼り付けたまま、私に声をかけた。


樹「そういえば、最近白血球くんと仲良いらしいね」

『、』

伸ばした手を引っ込めて、下を向く。ここまで噂が回っていたのか、はたまた、樹状細胞という特質から知ったのかは定かではない。
しかし、その言葉は、私が今1番聞きたくないものだった。

樹「……分かるよ。君が考える理由も。でも、昔から君は堅物すぎなんだ、もっとおおらかにならないと」

『おおらかに…ね』

おおらかという言葉に、彼の顔を重ねた。彼もまた、私のこの考えをわかってくれたら、そう言うのだろうか。

俯いて言葉数が減った私を気にかけた樹状くんは、気を遣ってあれやこれやと自分の話をし始める。
その健気さも、あの日の彼と重なって、胸の奥がどっしりと鉛のように重くなった。

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まみむのめ(プロフ) - 結(むすび)さん» はじめまして!コメントありがとうございます!結構時間をかけて作ったものなので、そう言って頂けてありがたいです! (2021年6月5日 1時) (レス) id: 7de2b213c2 (このIDを非表示/違反報告)
結(むすび)(プロフ) - コメント失礼します、、!最後まで読ませていただきました。作者さんの文章の書き方も設定を細かく考えている所も、キャラとの関係性も、主人公ちゃんのイラスト等も、何もかも素晴らしかったです!素敵な作品をありがとうございます、、 (2021年5月18日 18時) (レス) id: 0ce8940541 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まみむのめ | 作成日時:2021年3月5日 16時

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