邪神に憑かれるとかツイてねぇ！！ (ページ8)

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いや別に嬉しいとかじゃないページ8

「…アンタ座れんの？」

テーブルの前にある椅子は、ナワーブにとっては丁度いいが、体格の違うハスターには些か小さく見える。

「問題ない」

ハスターはゆっくりと椅子へ腰掛けた。椅子が軋む音を立てるかと思ったが、音一つ立てることなくハスターを受け止めていた。ナワーブは一瞬驚くが「まぁ、神だしな」とすんなり受け入れた。

ハスターの向かい側に腰を下ろし、カレーを一口すくって食べる。ピリッとした辛さが口の中に広がった。我ながらよく出来たと思う。
目深く被るフードの下からハスターを盗み見る。もちろん食べる手は止めずに。ふしくれだつ手が小さなスプーンを摘み、カレーを掬う。そのまま、カレーは深淵の中へと沈み込んでいった。

(食べるって言うか、呑み込んでる…？)

次々と深淵へと消えていくカレーを、いつしか食べる手を完全に止めて見つめてしまう。黙々と食べ進めていくハスターに、ナワーブは問いかける。

「なあ、どう？」

なにが、とは言わなくてもハスターには伝わっているらしい。深淵から覗く深紅の瞳が細められる。

「面白い味だ。嫌いではない」

美味いのか不味いのか聞いてんだよこっちは、とは言わずに「そうか」とだけ返し、食事を再開する。
ほんの少し。ほんの少しだけ、あの何を考えているのかよく分からない邪神に認められたような気がして、ナワーブは無意識に口角を吊り上げていた。