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五拾七の幕(貴方side) ページ10

結局その日の夕餉は、光忠殿と長谷部殿に挟まれるようにして食べた。
鶴丸殿が遠かったのは…言うまでもない。

折角の歓迎会という宴だったが、仕方ない…か。


『…静かだな』


この日の夜は、虫の音のみが響く、とても静かな夜だった。
平和でつまらなかった昔を思い出す。
そう言えば、晴明様と御一緒だった時もこれほどに寂しかったものだったか…

感情を持つと、ひとりでいることがこれ程までに切ないものらしい。
昨夜は青江殿がいたが、今夜は夜戦や遠征に出掛けた者も、寝てしまった者も多い。


次「んん?なぁに、アンタ…酒もなしにおひとりさまかい?」

『…まだお休みになられてなかったのか…次郎太刀殿』


この人は…よくもまぁ飲むお方だ。
先程の宴会でも飲んでいただろうに、まだ酒を持っているとは…


次「一杯どうだい?」

『…お付き合いさせていただこうか』


そうこなくっちゃ!と、ドカッと豪快に隣に腰を下ろす。
その安心するような、作っていないような笑顔に、少し寂しくなった私の心が温まる。


次「Aちゃんは結構飲むねぇ?」

『はは…これでも平安生まれでな、割と主が飲んでいたというのもあるのかもしれない』

次「ふぅん?まっ、楽しいなら一番だけどねっ!」


宴会の時は、あんなに声を出していたのに。
静かに、しかし楽しそうに飲んで、話して、笑う人なんだなぁ。


『あっ』

次「んん?」

太「…ここにいましたか」

次「兄貴!まだ寝ていなかったのかい?」

昼の騒がしさの影を潜めた廊下から、次郎太刀殿の兄様、太郎太刀殿が現れる。
それがなんとも、現実離れした出で立ちで、凛々しく立っていた。


太「次郎…貴方も、明日に響きますよ」

『酒はこの姿になって初めてなんだが、割と嫌いではないんだ』

次「兄貴も…3人で夜を過ごそうじゃないか!」


次郎太刀殿の、人を引き込ませるような笑顔。


太「…明日に響かない程度に」


我侭も寛容に受け取り、常に様子を見続ける太郎太刀殿の真面目さ。

私にも、兄弟がいたら…せめて、私を知っている存在がいたら…そんな想いを胸の奥に仕舞い込み、目の前の幸せそうな兄弟を見つめる。


次「そのまま酔いつぶれたら、アタシたちの部屋で雑魚寝だねっ!」

『私をそう簡単には潰せぬぞ?』

太「大方、次郎が真っ先でしょう」


こうして始まった、3人だけの夜。
静かでゆったりとした時間が流れた。

五拾八の幕(太郎太刀side)→←五拾六(獅子王side)



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ハク(プロフ) - とっても面白かったです!!番外編もみてみたいです! (2017年4月10日 17時) (レス) id: a0d23eb5b6 (このIDを非表示/違反報告)
新雪 - 最後涙でそうになった。w (2017年1月4日 1時) (レス) id: 295e266782 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はせがわ | 作成日時:2016年5月2日 20時

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