五拾の幕(歌仙兼定side) ページ3
歌「ふー……」
女性ひとりにこんなにも胸が高鳴ってしまうだなんて、雅じゃない。
けれど…こういう気持ちは、少し風情があっていいのかもしれない。
きっと僕らは、知るはずがなかった感情だ。
人の形になったのだって、この本丸で顔を合わせることになったのだって奇跡、なのかもしれないのに。
異性…というものは、ここまで意識してしまうものだったとは…
歌「ん…?」
厨に向かう途中、何やら閉め切った襖の向こうで話し声が聞こえる。
立ち聞きはあまり趣味ではない、が…
青「ごめんね、邪魔したみたいで」
倶「…なんのことだ」
青「Aちゃんのことだよ」
倶「…どうでもいいな」
青「ホント…つれないなぁ、君は」
…あの時廊下ですれ違った大倶利伽羅は…確かに、どこか様子が違った。
何か思いつめたようでもあったし、焦っているような…
そういうことかぁ…
彼も、案外分かりやすいのかもしれないな。
というよりきっと、この本丸のみんながみんな、彼女のことを心に留めている。
僕も、そのひとり……かもしれない。
歌「あぁ…風流だねぇ……」
この季節に咲くはずのない桜が舞う。
新しく思い浮かべた咏は、いつにもなく新鮮な感じがする。
歌「彼女とは…典雅を分かち合えるといいんだがな…」
筆を執ろう。
たったひとりに向けた、初めてのうたを。
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ハク(プロフ) - とっても面白かったです!!番外編もみてみたいです! (2017年4月10日 17時) (レス) id: a0d23eb5b6 (このIDを非表示/違反報告)
新雪 - 最後涙でそうになった。w (2017年1月4日 1時) (レス) id: 295e266782 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はせがわ | 作成日時:2016年5月2日 20時