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六拾参の幕(貴方side) ページ16

外を見るのは初めてだった。
機動が上がるように、と馬に乗せられ歩いてきたが、風を感じるのは心地よい。
ああこれは、皆で一度来てみたいものだと思う。


へ「万が一を考慮しての俺達だが、油断はするな」

薬「こん中じゃあ、Aの姉貴が1番偵察高いんだろ?」


言われるとおり、私は偵察と機動、それと隠蔽が他の打刀より…いや、偵察は脇差よりも優れている。
式神を使うことが出来るからだろう。


『なら…少し飛ばしておこうか』


そこらの草を手のひらに乗せ、息を吹きかける。
ひらひらと数羽の蝶に形を変えたそれは、散り散りになって飛んでいった。


三「ふむ…美しいものだな」

『貴殿がそれを言うか』

へ「取り敢えず何かある前に進むぞ」


今のところ特段変わりはない。
一見すれば穏やかな散策ではあるが、選択を間違えれば破壊の恐れもある。


『…』


…険しい表情をしている者はいない。
まあただ、切国殿や長谷部殿のようなしかめっ面もいるが、三人の表情は慣れているようなものだった。


『…』

燭「…緊張してる?」


不意に、後ろから声をかけられる。
その声の主、光忠殿は優しく微笑んでいた。


燭「安心してくれ、僕達が守ってあげるから」

薬「そうそう、古参刀も少なくないし、実践慣れしてる」

『…それなら頼もしいな』


別に緊張していた訳では無いが、彼らなりの気配りだろう。
いや…本当に頼りがいのある者達だ。


呑気に進軍していると、ぴりりと脳に伝達される。
敵の気配が、近くに。


『…いる』

切「…」

へ「馬から降りろ。…いつでもかかれるようにしておけ」


緊張感が走る。
軽快に地に足をつき、抜刀して構える。
すると彼ら5人は私を囲み、それぞれが構えた。


へ「…A。今から実戦になる。焦らずに手合わせを思い出せ」

『…了解』


先程まで吹いていた風がピタリと止んだ。
辺りは虫や鳥の声すら聞こえない。

響くのは、胸の鼓動のみ。


切「…気を抜くな」

薬「誉は考えなくていいんだな?」

燭「僕らは援護に回れるように、かな」

三「ははは…時間は掛かるまい」

へ「…来るぞ」


妙にしっくりと手に染み付くような自分の本体をもう1度握り込む。
私の、初めての戦。

…晴明様より造られた藤姫、推して参ろうではないか。

六拾四の幕(烏side)→←六拾弐の幕(にっかり青江side)



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ハク(プロフ) - とっても面白かったです!!番外編もみてみたいです! (2017年4月10日 17時) (レス) id: a0d23eb5b6 (このIDを非表示/違反報告)
新雪 - 最後涙でそうになった。w (2017年1月4日 1時) (レス) id: 295e266782 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はせがわ | 作成日時:2016年5月2日 20時

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