六拾弐の幕(にっかり青江side) ページ15
内番も出陣も遠征もない、珍しく非番の日。
特に何をするでもない僕は、内番服のまま自室に向かっていた。
青「おや?」
『青江殿…ふふ、随分と楽な服装だな』
青「あぁ…このままじゃあ燭台切くんや歌仙くんに怒られてしまうかもねぇ」
くすくすと優しげに笑う彼女は、僕と違って凛々しい姿だった。
しっかりと烏帽子を被り、胸に鎧を身につけ、刀も拵えて。
青「…君も大変だねぇ」
『仕方がない、私は弱いからな』
確かに、彼女は機動、偵察、隠蔽以外はてんでダメだった。
1度長谷部くんとの手合わせを見ていたけど…まぁ可愛いものだったよ。
だからこそ…少し心配な部分もある。
まぁきっと、同じ部隊の彼らが全力で守ってくれるだろうけどさ。
青「…僕も行きたかったなぁ」
『残念だったな。次は頼んでみようか』
青「どうだろうね?できるかな?」
『きっと』
あぁ…その笑顔に僕は引き込まれる。
刀剣女士自体この世界では珍しいものだったが、まさかここまで…
こんな世間話を交わしていると、門の近くから彼女を催促するような声が。
『…そろそろ行かねば』
青「…くれぐれも気を付けてね」
『あぁ…行ってくる』
青「…行ってらっしゃい」
たたっ、と僕が元来た方向へと走って行く。
どうか、無事に帰ってきます様に。
『青江殿!』
青「なんだい?」
『次は絶対…共闘の約束を!』
青「…そうだね、楽しみだよ」
くるりと再び向きを変え、僕の目の前からいなくなったAちゃん。
短刀たちの行ってらっしゃい、の声が響く。
ねぇ、Aちゃん。
「行ってらっしゃい」って…ひとつの言葉の人質だと思わないかい?
枕詞のような、二つでひとつのような言葉みたいだよね。
だから僕は…「おかえり」と………
君の「ただいま」が聞きたかったんだ…………
六拾参の幕(貴方side)→←六拾壱の幕(燭台切光忠side)
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハク(プロフ) - とっても面白かったです!!番外編もみてみたいです! (2017年4月10日 17時) (レス) id: a0d23eb5b6 (このIDを非表示/違反報告)
新雪 - 最後涙でそうになった。w (2017年1月4日 1時) (レス) id: 295e266782 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はせがわ | 作成日時:2016年5月2日 20時