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五拾八の幕(太郎太刀side) ページ11

『…寝たな』

太「…想定内です」


始まってそう時間が立たないうちに、次郎は眠りについた。
あれだけ宴でも飲んでいたから当たり前だろう。


太「…」

『?あぁ、気にするな』

太「はぁ…」


その次郎は今、A殿の腰に抱きついている。
なんとも幸せそうな顔で。
A殿はそうは言っているが、これは兄として…どうも気にするなというのは難しい。


『ほら、いいから飲め』

太「…すみません」


柔和な笑みで酌をしてくれるA殿。
これで調子に乗った次郎がこのザマ。
…確かに、悪くは無いのだが。


太「…もう、ここには慣れたのですか」

『んーそうだな…まだ日は浅いが、なかなかに居心地がいい』

太「そうですか…」

『それより太郎太刀殿は、こうやって晩酌をするのはないのか?』


不意に投げ掛けられた問いに詰まる。
酒は嫌いではない。
でもまぁ、確かに、私はあまり口にはしない。
大方…次郎の反面教師…が影響なのだろう。


太「今日が初めて…かもしれませんね」

『ふむ…通りで次郎太刀殿が楽しそうな訳だな』

太「弟が…?」


流石に時間帯も考えてのことだろう、いつもよりは静かだったが、そこまで変わりはなかった。
いつも通り、テンションが高いようにも見えたが…


『…宴とは違っていたな。…幸せそうだった』

太「…そうですか」

『…兄弟は…いいものだな』


寂しそうに下を俯くA殿。
そう言えば彼女は式神だったか…
今までずっと、どれだけ寂しかったのだろうか……


太「…ここにいる者は皆、貴女を一人にすることは望んでいません」

『……そうか…』


コトリ、と彼女が盃を縁側に置く。
それと同時に腰を上げ、くるりとこちらを振り返った。


『ひとりに、しないでくれ』


消え入るように呟いたA殿は、悲しそうに微笑んだ。
その時流れた風が、不思議と眠気を誘う。


『どうか、ここに、いつまでも…』

太「…A…殿……?」


とうとう意識が遠のいていき、瞼が重く感じられる。
彼女が呟くその声すらも聞こえなくなっていく。


不思議と、ゆらゆらと揺らめく陽炎のように佇む彼女。
私は考えることもできずに眠りについた。

五拾九(加州清光side)→←五拾七の幕(貴方side)



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ハク(プロフ) - とっても面白かったです!!番外編もみてみたいです! (2017年4月10日 17時) (レス) id: a0d23eb5b6 (このIDを非表示/違反報告)
新雪 - 最後涙でそうになった。w (2017年1月4日 1時) (レス) id: 295e266782 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はせがわ | 作成日時:2016年5月2日 20時

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