103.不穏 ページ8
Side:ab
待ち望んだはずのその日を迎えたはず。
憧れだったその日を、
その日々を、今頃過ごしているはずだった。
それなのに、
いま自分は一人で、
鏡に映る自分の姿を見つめながら、
がむしゃらにステップを踏み続けている。
コンサートの準備も新曲の振り入れも、
自分が一番できていなくてはいけない。
他のメンバーには個人の仕事があって、
自分にはそれが極端に少ないから。
それなのに。
自分のふり覚えの遅さに腹が立った。
hk「休憩は休憩しとけ」
照にその言葉を言われたのは、
去年の忙しかった時期ぶりだった。
あの頃とは、仕事量が違う。
自分は何も出来ていない。
焦りだけが積もっていって、
仕事や練習を理由に、病院に通う頻度は落ちていき、
反比例するように処方される薬の量は増えていった。
「明日の撮影が…」
また他のメンバーが
自分のスケジュールには入っていない撮影の話をしていて、
俺は、逃げるように部屋の隅に移動して、
コンサートのセットリストを眺め始める。
聞きたくない話題ほど、
聞こえてきてしまうのは今に始まったことじゃない。
違うことを必死で考え続ける。
頼みの佐久間も、
今は別の仕事の話をしていて近づけない。
自分はいつから個人の仕事を再開できるのか、と
マネージャーに問いただすと
「コンサートが終わって、体調が落ち着いたら順次」
とはぐらかされた。
年末、仕事をセーブする前に収録を済ませていた分の放送も
そのほとんが終わっていて、
デビュー日を迎えた今、
これから自分の姿がテレビに映る回数が減っていくことは目に見えている。
早く戻らないと、
居場所はどんどんなくなっていく。
気持ちは焦るばかりだった。
「昨日のロケさぁ」
楽しそうな話を聞くたびに、
胸が締め付けられる。
「明日の収録がね」
「忙しい…」
「ありがたいことだよ！」
多忙を極めるメンバー。
置いていかれている感覚だけが
背中にのしかかってくる。
些細な言葉がどんどん突き刺さる。
耐えられなくなって俺はリハ室を出て、
化粧室に走った。
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haryu(プロフ) - の！さん» の！さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです。ありがとうございます。励みになります！頑張って完結させたいと思いますので、もう少しお付き合いください！ (2020年6月13日 18時) (
レス) id: 70e445560a (このIDを非表示/違反報告)
の！(プロフ) - すごく大好きです。頑張ってください。 (2020年6月13日 0時) (レス) id: 919d8e7977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月1日 4時
