130.もう少し早く気づけば ページ36
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静かな寝室で目を覚ました。
彼の胸の中で眠ってしまったことを思い出す。
すべてが嘘だったのではないか、
と思うほど、穏やかな気持ちだった。
外はまだ暗くて、
寝室には自分だけがぽつりと取り残されている。
確かめるように喉に空気を送ってみるけれど、
音は鳴らなかった。
やっぱり夢じゃなかったみたいだ。
静かにベッドを抜け出して、
目黒の姿を探す。
彼は、リビングのテーブルに突っ伏して眠っていた。
大きな体を曲げて、
テーブルに上半身だけ預けている。
見ているだけで辛そうな体勢だったので、
彼を起こさないように抱き支えて、
テーブルを少し押して空間を広げ、床に寝かせた。
mm「…亮平…」
声が聞こえて、ビクッとしたが、
すぐに寝息を立て始めたので、
それは寝言だったようだ。
彼にブランケットをかけると、
自分からその中に収まるように小さくなる。
その姿はあどけない。
きれいな寝顔をしばらく眺めた。
思い残すことのないように、
瞳に刻みつけるように見つめた。
その数分では足りなかったけれど。
診察を受けて、
現実を目の前に突きつけられると、
自分の唯一の取り柄だったこの頭脳は、
どうしたらこの世界から消えることが出来るのか、
勝手に計算を始めた。
この苦しみから逃げる方法を必死に探せば探すほど、
思考はここに辿り着く。
人生のほとんどを
『アイドル』という職業にかけてきた。
他の方法を見いだせなくて、
違う道を歩く方法を知らなくて、
覚悟はあっさりと決まってしまった。
でも、もっと確実な方法をこの頭は知っているのに、
なぜか自分はこの方法を選んでいるから、
心のどこかで、
まだここにいたいと願っているのかもしれない。
目黒の寝顔を見ていると、
色んな気持ちが揺らぎそうだった。
キッチンに向かい、
コップにいっぱいに水を注ぐ。
かき集めた大量の錠剤を
淡々と開封していった。
積まれていく白い薬の一つ一つが
心に刺さっていた
色んな破片と重なってみえて、
開封する度に、
その破片が取り除かれていくような感覚に陥って、
一瞬ためらった手も、心も、
もう止まることはなかった。
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haryu(プロフ) - の！さん» の！さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです。ありがとうございます。励みになります！頑張って完結させたいと思いますので、もう少しお付き合いください！ (2020年6月13日 18時) (
レス) id: 70e445560a (このIDを非表示/違反報告)
の！(プロフ) - すごく大好きです。頑張ってください。 (2020年6月13日 0時) (レス) id: 919d8e7977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月1日 4時
