118.傷 ページ23
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重苦しい空気だけが、ずっと流れている。
みんな床に座り込んだまま、
何も言おうとしないし、
動こうともしなかった。
ラウールに言われたことは、
すべて図星だった。
俺たちはデビューという言葉に
浮かれていたのかもしれない。
誰よりも冷静に見ていたのは、
ラウールや康二、
そして、寄り添おうとしていた目黒で、
俺たちは自分のことばっかりで、
結果的に阿部を傷つけていた。
「ごめん」
その空気を断ち切るのは俺である必要があった。
あのとき、
「わかる」
と口走ったのは俺で、
その言葉で阿部の何かは崩壊した。
nb「…いや、涼太だけのせいじゃない」
翔太がかばおうとしてくれているが、
言い逃れることは出来ない。
fk「…情けねえなぁ…」
ふっかが少しだけ体勢を崩して、
天を仰ぎながら言った。
その言葉で、完全に止まっていた空気が
少しだけ流れ始める。
黙り込んでいたところで状況は変わらないし、
起こってしまったことが、
なかったことになるわけでもない。
視線を上げると、
水浸しになった資料や、
落ちたままのペットボトル、
濡れた阿部自身の荷物が散乱している。
sk「あーあ、
スマホ割れちゃってる…」
佐久間が力なく言いながら、
床に落ちていたものを拾い始めた。
それに、照やふっかも続く。
俺も翔太と雑巾やモップを持ってきて、
一緒に片付けを始めた。
しかし目黒は、
その場に座って項垂れたままだった。
それに対して、
俺たちもなんと声をかけてやればいいか分からなかった。
彼には何の責任もないのに。
きっかけそのものは、
佐久間と翔太だったのかもしれない。
ただ、それはあくまで「きっかけ」であって、
こうなってしまう危うさは
常にあったように思う。
たちが悪いのは、
お互い同じ人物のためにすれ違ってぶつかってしまったこと。
矛先がずれただけで、
みんな阿部のことを想っていた、はずだった。
俺も、阿部のことを想って
「わかる」と声を掛けたつもりだった。
彼の心に寄り添ってやりたかった。
でも、結果はこれだ。
阿部は、自分のために揉めていると知ってしまった以上、
また自分を馬鹿みたいに責め始めてしまうだろう。
俺たちは何をしていたのだろうか。
みんなで支えると誓い合ったはずなのに。
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haryu(プロフ) - の！さん» の！さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです。ありがとうございます。励みになります！頑張って完結させたいと思いますので、もう少しお付き合いください！ (2020年6月13日 18時) (
レス) id: 70e445560a (このIDを非表示/違反報告)
の！(プロフ) - すごく大好きです。頑張ってください。 (2020年6月13日 0時) (レス) id: 919d8e7977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月1日 4時
