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「えっと、ご忠告どうも?」
彼女は私のことが大嫌いなはずなのに、どうしてわざわざ言ってくれるのか。もし仮に誰かが私に危害を加えようとしているとして、私のことが嫌いなら忠告なんてしないはずだ。そもそも私1人潰すために学校の人たち巻き込んでひと騒ぎ起こせるような人物だぞ。
また何か企んでいるのかと思わないこともないが、あの日以来停学処分になり(あれだけのことをしても停学処分であることに学園の闇が垣間見える)、登校できるようになってからは異能を安易に使うこともせず目立たないよう生活していると聞く。以前の恋に一途で加賀美先輩しか見えていなかった彼女とはまるで人が違うと、驚いた様子で以前副会長が話していたことを覚えていた。
「…なあA、これでお茶一本買ってきてくんね?」
「え?…ああ、うん。分かった。」
ローレンの手が真っ直ぐ伸びて来て、半ば無理やり押し付けられた財布。さっきお茶買ったじゃん、なんて思ったけど言えなかったのは見上げたローレンの横顔があまりに真剣だったから。私は知っていた、友人とまた違った関係性だからこそ深く聞けないことだってあるのだ。だから私は大人しく出たばかりのコンビニへと再び足を踏み入れた。
ローレンが良く飲むお茶を一本手に取り、ぎゅっと握り込む。訳も分からず目元が熱くなって、それを堪えるようにしてぐぐっと眉間に力を入れた。あの場に私がいるとなにかまずかったのだ。きっと。分かっているけど、でも。
私とローレン、所詮主人と従者。村がなくなったって、掟を守る必要がなくなったって、結局私たちが一緒にいる前提としてはその植え付けられた関係性がある。
私自身が持つ異能も相まって、他人の言葉をそう簡単に信用できない私だから。それがどれだけ自分自身を孤独に追いやっているか、自分でも十二分に理解しているのに。それでも私は自ら自分の首をきつく締め付ける方を選ぶ。それが贖罪にならぬことは、理解しているのに。
「…はあ、」
こんなこと考えてたって仕方ない、気持ちを切り替えるように息を吐いてレジへ向かった。
さっさと会計を済ませて外に出ると、もう彼女の姿はなく寒さに耐えるように手を擦り暖を取っているローレンだけがそこに立っていた。
「お待たせ。冷たいので良かった?」
「おー、ありがと。家にお茶一本もなかったんよね。」
じゃあ帰りますか、何事もなかったみたく振舞う彼にまた私も笑った。
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はるた。(プロフ) - purin1127yさん» コメントありがとうございます!自分ペースにはなりますがこれからも更新していきますので、よろしくお願いします! (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 蝶形苺_DIAさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です😭 (3月23日 11時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
purin1127y(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。無理しない程度に更新頑張ってください‼︎ (3月22日 3時) (レス) id: da4c80d9fc (このIDを非表示/違反報告)
蝶形苺_DIA(プロフ) - まっじでおもろい!小説家になれると思いますっ!更新楽しみにしてます😍 (3月19日 22時) (レス) @page47 id: b7f5c20393 (このIDを非表示/違反報告)
はるた。(プロフ) - 継森さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!誤字のご指摘もありがとうございました、訂正いたしました! (3月19日 22時) (レス) id: 1d5bdf50b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるた。 | 作成日時:2024年1月6日 22時