六十一枚目 ページ15
その後の僕はというと、村の皆に挨拶回りをしていた。なにせ三、四年程帰ってないからね
そんな会話の中で、やっぱり多い質問は
「サク、お前恋人は?」
っていう凄くお節介な質問ばっかり
なおかつ、僕が一番答えにくい質問。心配してくれるのはありがたいけどね
『余計なお世話だよ、本当』
ふと周りを見渡すとゼン王子と白雪が見当たらない
二人で何処か行ったのだろうか
(…探すのは、野暮ってもんだな)
白雪を救出してからまともに二人きりで話せていない筈だから、積もる話は山ほどあるだろう
「サク」
『あれ、もう飲み比べはいいの?』
「あぁ。ゼンと白雪が抜けましたから、お開きです」
「オビはまだ残って飲んでるって」
木々は不敵に笑う
わざわざ僕に言う辺りが確信犯か
『…じゃあ僕も少しのんびりするかな』
「そ?私達は部屋に行くよ」
『おやすみ。木々、ミツヒデ』
「「おやすみ」」
ーー
『そこの猫目の美丈夫殿。良ければ相席しても?』
一人で酒を飲むオビに声をかけると、彼は僕を見て笑った
「こんな綺麗な女性と話が出来るなら、光栄だ」
『君まで茶化すなよ』
「そっちが先でしょーに」
僕は隣に腰掛ける
空のグラスに酒を注いでくれようとする彼をそっと止める
『いいよ。僕は、君みたいに酒が強くないからすぐ酔っ払う』
「介抱なら手厚くしてあげるのに」
『酔った勢いで言いたくない話だから』
そう言うとオビはグラスを置いて、立ち上がった
「俺も、あんたを待ってるのがそろそろ嫌になって来てたんでね」
『わ…!?』
抱き上げられて、そのまま宿舎がある方ではなく、森がある方へ進む。周りは酔い潰れた人ばかりで、横抱きにされている僕に対する冷やかしの声はなかった
暫く歩き、登って、大木の枝の上に二人で腰掛ける
さっきまでの喧騒が嘘のような静けさだ
「それで、話って?」
『……オビ』
小さく名前を呼ぶ
彼の手を取って、手のひらに口付ける
『…鉤爪と相対している時、柄にもなく今君がいてくれれば。と何度も思った』
「……」
『絶対に帰れるって分かってるのにね』
見上げて、真っ直ぐにオビを見つめる
冷静な頭と暴走する心臓。今、ここで照れたら、台無しだ
グッと抑え込む
『離れて気づく、なんて恋愛小説のようだけど…僕は…"オビが好きだ"って漸く自覚したんだ』
絞り出した言葉は情けないことに少し震えてた
でも、ちゃんとオビの耳には届いていて、嬉しそうに笑ったオビの顔を僕はずっと忘れないだろう
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あやや - いつも楽しみに読んでいます。これからも頑張ってください。応援しています。 (2016年3月25日 0時) (携帯から) (
レス) id: 4895b1970d (このIDを非表示/違反報告)
あおぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても素晴らしい文章に感動しています。これからも更新応援しています、頑張ってください。 (2016年3月17日 19時) (レス) id: 846b37e79f (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - わかなさん» ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます (2016年3月17日 11時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
わかな(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎回楽しくてウハウハですｗ更新これからも頑張ってください！ (2016年3月17日 7時) (レス) id: d4ec265b43 (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 沢山のコメントありがとうございます!!新作の更新はもう少し構想を練ってから更新したいと思っています! (2016年3月13日 1時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2016年3月4日 17時
