三十枚目 ページ32
Side:Obi
主と一戦交えた後、自室に戻るとテーブルに見慣れない物があった
「ん?これは…」
手に取ると微かに澄んだ音が鳴るそれは、胡桃石で出来たブローチだった
それと傍らにある書き置きには
"画家の仕事で出張するから、暫く会えない。代わりに僕が作った物を置いて行くから、駄々をコネないでしっかり待つこと"
「なにそれ。俺をいくつだと思ってるんだか」
名前は記されていないけど誰だか分かる
「でもそっか…出張…まあ俺も出張だし、運良く会えないかね、なんて」
月の光に翳すと胡桃石の周りにある蜂蜜色の石が光る。何処か彼女の目の色に似ている
「肌身離さず、ね」
その意味の真意は一体何処にあるのだろうか
ーー
朝になって、いよいよタンバルン行きだ
この先は、気が抜けない
「あれ?オビ、そのブローチ」
それはそれとしてお嬢さんがやっぱり目ざとい
襟巻きで隠れたと思ったのに
「お姉さんから。昨日部屋にあったんだよ」
「へぇ。サクの手作りかな?私も何回か髪飾り貰ったことあるけど、全部手作りだったんだ」
「お嬢さんそれ貢がれてない?」
思えば彼女はよく分からない
あの時、巳早と何を話したのか、何を隠しているのか。あいつが知ってて、俺が知らないことはなんなのか
色々聞きたいことは山積みだけど、それはタンバルンの件がひと段落着いてから
「でも、なんで急に?」
「…さぁ?出張に行くから駄々こねないで大人しく
待ってろって書いてあったけど」
「え?待っててっていう理由で、ブローチ?」
そう言えばそうだ
俺と会えない期間なんて結構あったはずなのに、今更すぎる気がする
「サクの方にも心の変化があったのかな…?」
「心の変化?」
「例えばだけど、そのブローチを自分だと思って身に付けて欲しかったとしたら…」
「待ったお嬢さん。それ以上は、」
「あ、そ、そうだよね。ごめん」
その先は口に出させたくなかった。その先は、俺が本人に聞きたい
もしそうでも確かめようがない訳だし、期待して裏切られるのは嫌だ
とか思っていたら
「なっ…」
「えっ…」
タンバルンのシェナザード城に着いて一日過ぎ、色々あった地下通路を抜けた先。つまりは温室に
彼女がいた
『おや、とうとうバレたか』
「いやいや隠す気なさすぎじゃ…。どうしてサクがここに?」
お嬢さんがそう問うと
『え、出張』
「「それはわかってる」」
見事にお嬢さんとハモった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 379人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つねさん(プロフ) - 1話目で菱田さん！！！！って叫びました。この作品好きすぎて辛いです涙出てきました応援してます！！！ (2016年7月29日 23時) (
レス) id: 45649277a8 (このIDを非表示/違反報告)
りりか♪ - おもしろいです！ (2016年5月6日 23時) (レス) id: 16d26bbe18 (このIDを非表示/違反報告)
ノンナ(プロフ) - めいこいですね！わかります！ (2016年3月21日 17時) (レス) id: 62b81bdc65 (このIDを非表示/違反報告)
梛(プロフ) - 凄く面白いです！！主人公ちゃん可愛いですね！これからも楽しみにしています。頑張ってください！ (2016年2月17日 0時) (レス) id: 63f277ad3e (このIDを非表示/違反報告)
春月(プロフ) - 零雨さん» コメントありがとうございます。誤字指定ありがとうございます!確かにおかしかったですね(笑) (2016年2月12日 21時) (レス) id: 3cb9b28fc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春月 | 作成日時：2016年1月26日 18時
