序章 ページ2
運命の出逢い なんて聞こえはいいけど、そんな素敵な出逢いじゃない
寧ろ私は、茨の道を選んだようなもの
それでも背を向けたりしないのは、自分と大切な人を守る力が欲しかったから
「おいあんたら、派手な怪我してねえか」
けして怯えてる人間にかけるような親切な言葉ではなかったそれを、気にしている余裕なんて無かった
『──私に』
「ん?」
『私に、ダディを守る術を教えてくださいっ!!その為なら、女だって捨ててやるからっ!!だからどうか!』
鬼を滅する術を!
ーー
『宇髄さーん。朝ですよー』
障子越しに声をかけるが反応は無し
いつものことなので気にはせず、遠慮など無しに襖をスパンッと勢いよく開ける
部屋の主は布団の上でうつらうつらと船を漕いでいる
『……Good moaning!!師匠!鎹烏が派手にわめていてるので起きてください!』
「〜〜、派手にうるっせぇ…聞こえてるし、起きてるっつの」
昨日は非番でお酒を煽っていたのが響いているのか、頭を抑えている。が、知ったこっちゃない
『雛さん達が作った朝食冷めてしまっても知りませんからね。私が独り占めしちゃいますからっ』
それだけ言い残して居間へと踵を返す
広い庭から見える空は快晴。とても良い日だ
空には種類までは分からないが鳥が飛んでいる。それを私はこの宇髄邸で眺めている
(あれからもう四年経ってるのね…)
この家の主人、宇髄天元。私も所属している鬼殺隊の最高位“柱”の一人
15の時私は彼に助けられ、弟子入りし今も尚この宇髄邸を拠点に任務をこなす
ここが今、私の居場所
「おい寧音。なに呆けてんだ」
キチンと起きて身支度を終えた師がいつの間にか隣に立っていた
この人は本当に足音がしなくて困る
『いいえ別に。さぁ!愛しいhoney達が丹精込めて作ってくれた朝食を食べに行きましょう!』
「てめぇの嫁じゃねえんだけどな。…と、よぉ海棠」
宇髄さんは前方を見て片手をあげる
それは私の大切な人
『あ!ダディ!Good moaning!』
私も手を上げて振れば、優しい笑顔で応えてくれる
それだけで今日も頑張れそう
「全員揃ったし、久しぶりに囲んで飯が食えるな。あいつらも喜びそうだ」
『えぇ!なんだか、今日は良いことがありそうね!』
これが日常。今の私
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作者名:春月 | 作成日時:2019年11月3日 23時