外伝集 (ページ34)

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【アル戦】複雑乙女心 Ⅰ ページ34

これは、今は婚約者の二人が付き合い始めたばかりの話

シンドゥラでのいざこざが終わって、ようやく恋人となったルナと蜜月を過ごせると思っていた俺
だが、この時の俺は知らなかった
まさかルナが、とてつもなく恋愛に疎く、耐性がないかを

シンドゥラ帰省後、ペシャワールに戻った俺らは少しばかりの休暇となっていた
殿下は檄文の準備をしているようだが、家臣の俺達は何もできないので待機というわけだ
というわけで、ルナと存分にいちゃつこうと…思っていたのだが

「部屋にもいない殿下の所にもファランギース殿の所にもいないとは…一体どういうことだ」

朝方からずっとルナを探しているのだが、姿が見当たらない
必ず一度は見かけるはずのあの小さな恋人の姿が。だ
しかも、皆口をそろえて"先ほどまではいた"というのだ。明らかにこれは不自然すぎる

(もしや避けられている…?はて、だとすれば何をしでかしたのだ)

思い当たる節はない
あれと恋愛関係になってから女性に手を出していない。というか出す気もない
立場上、ファランギース殿を口説くこともあるがそれは戯れであることを彼女は知っているはずだ
となると本当に思い当たらない

(どういうことだ…?)

彼女が俺を避ける理由などないはずだろう
向こう側にやましいことがなければだが、ルナにかぎって他の男と遊ぶことはない

「ここにいたのか」

と、ナルサス卿が声をかける
そうだ。この男なら何か知っているだろうか。シャクだがこの男はルナと付き合いが長い
ファランギース殿もだが、問いかけても"おぬしに教える義理はない"の一点張りだった
そうとう嫌われたようだ

「どうした?」

「いや、あれからルナと話せたのか気になってな」

「……」

よりにもよってその話題か
とは思ったが口には出さなかった

「その様子では避けられているようだな。全く…あいつは」

「何か知っているのか?」

不本意ではあるが俺には分からないために、この男に頼るほかない

「あいつが男慣れせずに育ったのは知っているか?」

「薄々は、な」

「まあ、率直に言ってしまえばそういう事だ。素で話す事自体慣れていないのに突然の恋人、しかも愛情表現が激しいときた。それに耐えられないルナの取る行動といえば…もう分かるだろう?」

つまりは

「恥ずかしくて俺から逃げていると?」

「そうだな。いい機会だ。あいつの男への苦手意識をどうにかしてくれ」

と、俺に言われてもな