外伝集 (ページ35)

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【アル戦】複雑乙女心Ⅱ ページ35

「そもそも、あちらが本気で気配を消している場合、流石の俺も歯が立たないのだが?」

あいつは一応、万騎長の総都督だ。本気で戦った所は未だ見たことはないが、その座に上り詰めるのがたやすい事でないことは、俺でもわかる
だが、ナルサスは秘策があるようで、にやりと笑った

「気配は分からずとも、他の感は働くだろう?」

「…?」

「おぬし、確か鼻が良かったな?」

「……まさかそれでルナを探せと?」

それこそ無理難題だろう
鼻がいいとは言っても、相手が近くにいる場合だ。そういうのは動物の専門だろう

「なんだ。残念だ。仕方がない。では他の案だ」

「…ナルサス卿、俺で遊ばないでもらえるか」

「おや、バレていたなら仕方がない。お詫びに、確実にルナを捕らえる策をやろう」

ー・－・－

『今のところ、見つかってない…よね』

誰もいない廊下を歩きながら、周りを警戒する
逃げてもいつかは慣れなければいけない問題なのはわかっているのだ。けれど、恋愛初心者にも等しい私が、愛情表現が激しい彼についていけるわけがない

(…だって、彼は手慣れてるし)

過去のどうこうを言っても仕方がないが、このもやもやは一生晴れることはないだろう
意味のない嫉妬だとは分かっている

(私、こんなに独占欲強かったんだ)

恋愛を通して新しい自分の一面を見た気がする。見たくもなかったが
一日中ギーヴから逃げ回っていたが、もういい時間だ。いい加減に机仕事をしなければナルサスやアルスラーンに迷惑がかかる
周りを警戒することを忘れずに、部屋に戻る。鍵をかけてしまえば入ってこれないだろう
ようやく、一息つける

「気に食わんが、ナルサス卿の言っていた事は本当のようだな」

『!!?』

私一人しかいないはずの部屋に、男性の声がかかる
条件反射で剣の柄に手をかける。けれど、その姿は予想もしてなかった人物だ

「恋人に剣を向けようとするのは、些か不躾ではないか?ルナ」

『ギッ…な、なんでっ!?』

「理由はお前が一番知っているのではないか?」

長椅子に腰かけていたギーヴはゆっくりと立ち上がり、こちらに向かってくる
逃げようと扉を押すが先ほど自分で鍵をかけたばかりで、開きはしなかった

(抜かった…!)

「自分の部屋が安全であるなどと過信していた結果がこれだな?まあ、ナルサス卿の知恵を借りたまでで癪だが」

『っ!』

彼の腕で退路を完全に塞がれる

「さて、話し合いといこうか?」

…終わった

これ以降私が彼を避ける事はなくなった