【アルスラーン戦記】詩が教える月への愛

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海賊退治を済ませたころ、議題に上がったのは多くの財宝が眠ると言われている島、サフディー島の話だった

「80年ほど前に、ギランの海にその人在りと名を馳せた、かの海賊王アハーバックが隠したとされる宝です」

『その価値は金貨にして一億枚はくだらないとかいう話もあるんだっけ』

「とんでもないお宝だな!」

金貨と聞いて、ギーヴの瞳がキラリと輝く
元々たまに盗賊まがいなことをしていたし、お金にがめついし、食いつくだろうとは思っていたけど

「金貨と聞いてお主の目が急に輝きを増したな」

『ほんと現金…』

さて如何するか。こちらは軍のための資金が大幅に必要としている身
この話が本当であれば、喉から手が出るほどに欲しい代物とも言えよう

(本当なら、ね)

これはシャガードからの罠である事はナルサスも理解しているし、この場の全員が話に興味はあれど、真実だとは思っていない

(だからこそ、乗っかる価値がある)

結果として、その場の話し合いではかのサフディー島に行く。という算段で話がまとまった
だが、その後再び集まり、ナルサスが策を言い渡す

「というわけです。殿下、宜しいですか?」

「あぁ、問題ない。こちらも全力で食い止めてみせるよ」

アルスラーンの了承をもらい、策は決行
城に残るのは、比較的に戦力が少ないと思われているエラムとアルフリード、アルスラーン。他は船に乗り、島に行くように見せかける
勿論、私もそちら側だ

『折角、海に出るんだから晴れても良かったのに。どうしてこうも今日の空気に合わせて曇り空なんだか』

「仕方があるまい。精霊達もこれから起こることを察知し、騒いでおる。天気も変わるはずじゃ」

『精霊は小心者すぎるんだってば』

「ルナ」

『はーい、ごめんなさーい』

咎められるように名前を呼ばれて、取り敢えず謝っておく。誠意がないのは気づかれているだろうけど
置いてある酒樽に腰掛けて海を見る。荒れはしていない比較的に穏やかな流れ
これなら、予定通りの時間に間に合うだろう

(シャガード…金儲けに目が眩んだか…元よりいい性格してたけど)

ナルサスの紹介で出会った彼は、笑顔の裏で黒いものを抱えていたのを知っていた
けれど、直接的に害は無かったしナルサスにも悪いし、放っておいた
まさかここで、対立するとは思わなんだ

『お前も大変だね。ナルサス』

「…あぁ」

いつの間にか隣に来ていたナルサスを見る
どうであっても、彼にとっては親友だった

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