【アルスラーン戦記】詩が教える月への愛

落ち着いたら ページ11

そうだとしても、アルスラーンの行く先に立ちはだかるのなら、掃討しなければいけない

『……私やダリューンは、貴方を裏切る事は絶対にないから、安心して?』

かけられるのは気休めにもならないものだった
でも彼は優しく笑ってくれた

数刻して、夜が更ける
そろそろ動く頃合いだろうか

『ナルサス』

「あぁ、行くぞ」

合図と共に、船を戻す

「…平気か」

海を見ながら気を引き締めていると、ギーヴが声をかける
色々意味が含まれていそうだけど、私は頷く。だって、一人だったあの時とは違うから

『貴方がいるもの』

「随分な、口説き文句だ」

『こういうのは嫌い?』

「まさか」

ギーヴがいなければ、私はきっと崩れてしまうような人間だから

「ルナ」

『なに?』

ギーヴは真剣な表情でこちらを見る
その顔に、こちらまで背筋が伸びてしまう

「いつの事になるかは分からんが、落ち着いたらお前を知る者だけで祝言を挙げよう」

『へ…』

「いつまでも、婚約者のままでは格好が付かんしな」

予想外の言葉に顔が熱くなる
まさかこのタイミングで告げられるとは思っていなかったけど、それ以上に嬉しかった

『もうちょっと、場所を選べないの』

「今のうちに告げなければと気持ちが先走ってしまってな。許せ」

とん、と彼に抱き着くと、容易く受け止めてくれる

『しょうがないから、許してあげます』

「それは光栄だ」

笑いあって、唇が触れる


「お主ら、場所を考えろ!」

「『あ』」

ダリューンの叱咤で我にかえる。ギーヴしか目に入らず、周りの事を一切忘れていた

「全く、ギーヴと恋仲になって随分と性格が変わったな」

「昔は男に近づかれるだけでビクビクしていたというのにのう…」

ナルサスとファランギースも呆れ顔
ファランギースに関しては、少し遠い目をしている気もする
恥ずかしくなって、私は逃げるようにギーヴの胸に顔を埋めた

「俺の女神は、誠、照れ屋だな」

『か、からかわないでってば!』

ギランの港が見えるまで、私はギーヴのからかわれるのだった

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