他人には分からない ページ7
透明感のある、澄んだ歌声
その声が歌うのはラブバラード。それは、まるでこの場にいる誰かのために歌っているようだ
「廉」
「ん?」
「虎石泣いてるんだけど」
「はぁ!?」
聖に言われて振り返ると、和泉が肩を震わせて泣いている
マジか。どうしたんだあいつ
『ありがとうございました』
和泉に気を取られている間に、女の演奏が終わる
拍手喝采に包まれる中、そいつは迷いもなく和泉の前で歩みを止めた
しゃがんで、取り出したハンカチで和泉の涙を拭いた
『また泣いてるの?泣き虫和泉』
「っるせ」
どうやら知り合いらしい
女は優しい顔で笑っているが、その笑みの感情は俺にはわからない
「虎石、スタッフルーム行け。話は通す」
「…わりぃな」
和泉が立ち上がり、女の手を引いて奥へ引っ込んだ
「ねぇ空閑、彼女は虎石とどういう関係?」
俺と同じ疑問を持っていた聖が空閑に問う
空閑はしばし考えたあと、ふっと笑った
「さてな」
「あれ、誤魔化された。まぁいいや。あらかた見当はついてるしね」
「あんま詮索すんなよ。虎石にどやされるぞ」
「おぉこわ」
聖は楽しそうだが、俺には何が何だか分かんねえ
そんな俺を見て聖は「鈍いねえ」と笑った
パタンと、扉の閉じる音がやけに響く
私と彼の呼吸音のみが聞こえる。周りに喧騒はない
なんと声をかけたらいいのか分からなくて、でも、話さなきゃいけないことはいっぱいあるのだ
深呼吸を一つして、口を開く。けど
『!!』
言葉を発するより前に抱きすくめられた
きつく私を抱きしめる腕が少し痛い。けど、離さないって言われているようで嬉しくもなってしまう
「……哀葉だ」
ぽつりと溢れた言葉に、私もまた、和泉がいることを実感してしまって
『和泉…』
ずっと我慢してた気持ちが溢れていく
やっと、やっと彼に会えた
『和泉、ごめんね…ごめんねっ…!』
私も抱きしめ返して、謝罪をのべる
謝ることしか出来ないから
「謝んな…お前は悪くねえだろ」
『でも、和泉を傷つけたから』
「確かに連絡断たれたのはこたえたけど、お前、言ってくれたろ?戻ってくるって」
私の頭を撫で、優しい声でなだめてくれる
さっきまで、私がなだめる側だったのに
「だから、お前まで泣くなよ。俺が泣けなくなる」
にへら、と笑う和泉
大好きな笑顔
「おかえり」
『ただいま』
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すず(プロフ) - 最高です……！！更新待ってます！ (2017年10月7日 10時) (
レス) id: 03b18b1ae8 (このIDを非表示/違反報告)
runa(プロフ) - 選曲が神すぎます！めっちゃ嬉しかったです♪これからも頑張ってください(*^^*) (2017年6月20日 0時) (レス) id: 00ce596435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2017年6月18日 9時
