甘えられない ページ43
それからあっという間に時は過ぎ、本日の練習が幕を閉じた
哀葉も帰る準備をしていると、先ほどジッと見つめていた揚羽が声をかけてきた
「黒崎哀葉」
『ん?』
「僕は、君が羨ましい」
『はい?』
突然のお褒めの言葉に間抜けな顔をする
「君は、僕の神様を、完璧に演じられるから…声も表情も仕草も」
『……』
「君みたいな声があったら『それ以上は言っちゃダメだ』……っ」
哀葉はとん、と揚羽の唇に指を当てる
彼女の表情は怒っている様にも悲しんでいる様にも見えた
『揚羽陸。お前が遥斗さんを心から尊敬してるのは知ってる。けどな、お前はお前だ。遥斗さんにもなれなければ、俺にもなれない』
「けどっ…!!」
『あとな』
哀葉の指が揚羽の襟元に移動したかと思えば、襟ぐりを掴んで引き寄せた
『自分の演技が出来ない俺に、模倣が上手いなんて言葉、言うんじゃねえよ』
「あ…」
先ほどとは違い、色は怒り
怒らせた事を悟った揚羽は咄嗟に謝ろうとするが、それより先に哀葉の手が離れた
『悪い。八つ当たり。今のは忘れてくれ』
揚羽の方を見ずに彼女は部屋を出る
これ以上、彼を傷つけない様にと
(あ〜〜やってしまった…)
部屋を出てから猛烈な自己嫌悪
だが、あれ以上その場にいたらもっと彼を傷つけていただろうとも思っていた
トボトボと歩いていると前方の水飲み場に数名溜まっている
(あ、和泉がいる)
他には星谷と北原。なにやら北原が二人をからかっているらしい
声をかけようとした哀葉だが、開きかけた口を閉ざした
(……やめとこ)
今、彼に話しかけて言えばきっと甘えさせてくれるだろう
けれど彼女はそれを良しとしない
稽古で忙しい虎石に余計な負担をかけたくない。そういう気遣いから哀葉は踵を返した
ー・ー・ー
「『ご馳走様でした』」
夕飯の時間が終わる
なんだかんだ彼女にとってこの時間は大切なものだった
(もうおしまいか)
そう考えてかぶりを振る
今が大事な時期であるからこそ、この我儘は胸にしまっておくべきだと自分に言い聞かせ、食器を持って立ち上がる
『じゃあ、片付けは俺がするから、和泉は寛いでて』
当たり障りないようにしながら、笑顔を作る
けど今日は何故か、そうもいかなかったようだ
「なあ」
『ん?』
「今日、なんかお前おかしくね?」
『えっ』
どきりと音を立てた
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すず(プロフ) - 最高です……！！更新待ってます！ (2017年10月7日 10時) (
レス) id: 03b18b1ae8 (このIDを非表示/違反報告)
runa(プロフ) - 選曲が神すぎます！めっちゃ嬉しかったです♪これからも頑張ってください(*^^*) (2017年6月20日 0時) (レス) id: 00ce596435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2017年6月18日 9時
