真剣勝負 ページ28
殴られた桐生はギャンギャンと吼えるが、それに動じる哀葉ではない
彼女は、先ほど曲を奪い、歌った男の元、室山へと行く
『おい』
「は、はいっ!?」
元々気弱な性格らしく、声をかけるだけでビクリと肩を揺らし、情けない声をあげた
『お前が本当に歌いたかったもんはなんだ』
「え…」
『自分で作った曲、あるんだろ?じゃなきゃあんな苦しそうに歌うはずねえだろ』
少なくとも、勝負始めの頃は辛そうな表情など一切していなかった
様子がおかしくなったのはオペラ勝負あたりから。つまり、曲を盗むというこの悪どい作戦は桐生以外は知らされていなかったというのが妥当な答えである
『お前が真剣に作った曲を俺は聞いて見たい』
「でも……あれは、割られて…」
段々室山の瞳に涙が溜まっていく。せっかく作った音源CDを割られたそうだ
哀葉はとめどない憤りを感じながら、彼に優しく微笑みかける
『じゃあ、パソコン音源聞かせてくれ。後ででいいからさ』
「っ……はいっ…!すみませんでした!自分が作った曲が、子供のように大事だって、俺、誰よりもわかってたのにっ…!!」
ついには泣き出してしまった。彼のような男がこのグループにいるというのは疑問だが、クラス内の実力者を桐生が集めた。という霧崎の情報からして、彼の実力は本物らしい
『おう。辛かったな』
ぽすぽすと頭を少し乱暴に撫で、哀葉は立ち上がった
『さってと…おい、ロック担当いるか?』
「俺だが」
『準備しろ。最後の勝負だ』
彼女は着ていた燕尾を脱ぎ、きちんと締めていたネクタイを緩める
ロック曲に、正装など不要。伝えるべきは魂の音楽
『ま、最も?お前の得意分野はロックじゃねえのは分かってるけどな』
「!!」
『けど、それとこれは別だ。勝負は勝負。ちゃんと最後までやれ』
哀葉の瞳がギラつき始める
完全にスイッチが入ってきている
『ただし、ライブジャック方式だ。俺からこのステージを奪ってみせろ』
圧倒的自信。これではもうどちらが悪者か分からないな。と終始見守っていた虎石は苦笑した
「さってと、邪魔者は退散すっか」
「そうですね。ついでにそこの彼は何処かに縛っておきましょう」
虎石と申渡は桐生を舞台袖の柱に縛り付け、客席に戻った
(さて、これが最後だ。派手にいくかね)
『いくぜ。お前ら』
「「おう」」
彼女のバンド仲間と共に再びステージに上がった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「クロスオーバー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すず(プロフ) - 最高です……！！更新待ってます！ (2017年10月7日 10時) (
レス) id: 03b18b1ae8 (このIDを非表示/違反報告)
runa(プロフ) - 選曲が神すぎます！めっちゃ嬉しかったです♪これからも頑張ってください(*^^*) (2017年6月20日 0時) (レス) id: 00ce596435 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春月 | 作成日時：2017年6月18日 9時
