有罪を無罪に ページ25
もうすぐ曲が終わる
そうすれば次は哀葉の出番だ
だが、彼女は生憎世に出していない上、完成しているものはこれしかない
つまり、同じ曲を歌う他に道はない
どうしようもない憤りをどうしていいのか、彼女にはわからなかった
『和泉…』
呼んだ名は、届くことなく消えて言った
「不利だね」
辰己は冷めた目で舞台を見ながら、そう言った
「いくら黒崎がこれ以上の素晴らしいパフォーマンスをしても、先に出したもの勝ちだ。彼らは、勝ち負けは最初から頭に入れていない。黒崎を潰すことだけ考えてた」
「それと、この後控えているロック曲も不利でしょう。前の影響で空気が悪くなってしまいます」
現状は最悪
卯川は虎石の様子を確認しようと、顔を見る。けれどその怖さに思わずヒッという悲鳴が出た
「虎石君目が据わっててめちゃ怖いんですけど…!?」
彼らでさえ見たことのない怒りの表情
人一人殺しそうな勢いだ
それもそのはずだ。この曲は彼女のものだけではないのだから
「とりあえず、南條の親父に頼んであいつに賠償金払わせるか」
「虎石、気持ちは分かりますが落ち着いてください。先に彼が模倣犯ではなく、作者であるという証拠品を探さなければ裁判では勝てません」
「ねえ二人ともそれ本気で言ってるの!?」
卯川も憤りを感じていたのは確かなのだが、あまりにも二人が本気なので怒りが吹っ飛んでしまった
そして珍しく、戌峰も噛み付かんばかりだ
「……許せないね、あれ。哀葉、辛くないかな」
「戌峰君…」
舞台袖へと通づるドアの前にはご丁寧に入れないように人が立っている
哀葉の元へ行きたくても、行く手段がない
もう曲も終わる
「くそ、何も出来ないのかよ…!!」
これだけ騒ぎ立てても誰も気にしないのは、音で声がかき消されているから
そして、誰も疑問に思わないから
曲も終盤ラスサビ前だ。しかし、虎石には違和感が生じた
『「…!」』
音が違う。二人だけが気づいた僅かな違い
「!見つけました!証拠!」
今までずっと携帯を操作していた申渡が、そう言う
これで一先ずは安心だ。後はそれを哀葉に届けるだけ
けれど、舞台に姿を現した哀葉の瞳には、怒りも悲しみもなかった
(軽蔑されたっていい。今は、ここにいるお客に凄いと思わせないといけないんだ。それが、プロであるべきなのだから)
真っ直ぐ前を見て、彼女はマイク越しに名前を呼んだ
『和泉!!来い!!』
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すず(プロフ) - 最高です……！！更新待ってます！ (2017年10月7日 10時) (
レス) id: 03b18b1ae8 (このIDを非表示/違反報告)
runa(プロフ) - 選曲が神すぎます！めっちゃ嬉しかったです♪これからも頑張ってください(*^^*) (2017年6月20日 0時) (レス) id: 00ce596435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2017年6月18日 9時
