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彼は永瀬廉というそうだ。


社会人一年目で何の職かは教えてもらえなかったけれど、まあそこそこ忙しいらしい。
住んでるところはある程度離れていて、旦那といるところに鉢合わせする可能性も少ない。







『...ただいま。』



いい大人が、しかも既婚者が、朝帰りなんて。
なんて馬鹿げた話なのだろう。
世間ではきっとこれを【有り得ない】というのだろう。



「どこに行ってたの?連絡しても出ないし。」



携帯の充電はとうの昔に無くなった。
連絡しなきゃ、と確かに思ったけれどなんて言い訳していいか私には正解がわからなくて、わからないまま家に帰ってきてしまった。



『ごめん、凄く話が盛り上がって、気づいたらお互い眠ってたの。充電も切れちゃって、、本当にごめん。』



咄嗟に考えた嘘を並べ、恐る恐る北斗の顔を見てみると何故か優しそうに微笑んでいた。



「そっか、Aにそんな友達がいたんだ。楽しかったなら何より。今度紹介して?」


『...う、うん。』



はあ、焦った。



さすがに苦しすぎるかと思ったけれどなんとかこの場を凌ぐことは出来た。
だけどそれはこの場限りの嘘に過ぎない。



次は、なんて言い訳をするのだろう。



不安や恐怖といった後ろめたい気持ちもあるが、私は身体の奥が震えるほどのスリルを取ってしまった。



馬鹿げた話でしょ?


でも私は確かに自分で選んだ。





禁断の果実を齧ることを。





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作者名:悠 稀 。 | 作成日時:2019年1月23日 0時

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