林檎と指環 (ページ14)

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．

まさか、
まさか、

あれは口説き文句なんかじゃなかったなんて。

『...気持ちは嬉しいけれど、私、、、』

「...ご結婚されているんですよね？」

薬指の指環。

外そうなんて思わなかった。
外したいとも。
だけれど、彼と寝た。
それはきっと、誰かに女だと認めて欲しかったから。
旦那に抱かれることもあまり無くなって、女として扱われることも無くなってきていたから。

...つまりは、寂しかったの。

「...それでもいいんです。ただたまに遊ぶだけ、寝るだけ、なんなら弄んでくれてもいいです。馬鹿みたいかもしれないですけど、貴女に惹かれてしまいました。」

目と目を合わせて、心から思っていると言うように真剣な眼差しで言われてしまうとこっちだって...

...て、いやいやいや、そんなのただの、
ただの処理道具に過ぎないじゃないか。
どうして彼との関係を続けようと1ミリでも思ってしまったの。

違う、違う。

そうじゃない、そうじゃない。

『...うん、いいよ。私も貴方のこと、気になるかも。』

噛み付くようなキスをひとつ。

禁断の果実を、

齧ってしまった。

．